「悪いとわかっていても捨てられぬ「先入観」」ライダーズ・オブ・ジャスティス Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
悪いとわかっていても捨てられぬ「先入観」
※スマホで読みやすい改行にしてます
マッツ・ミケルセン
デンマークを代表する名優
2006年の「007カジノロワイヤル」
の悪役ル・シッフルで世界的に
有名になり進出
最近では小島秀夫監督のゲーム作品
「デス・ストランディング」にも出演
活躍の場を広げている
自分も映画を観るうちに好きになった
俳優さんで特に「哀」の表現が本当に
素晴らしくすぐ感情移入させて
しまいます
前回は「アナザーラウンド」で
うだつの上がらない歴史教師を
演じましたが今作は一転
屈強な軍人でした
デンマーク映画ってなんか
シナリオにひと捻り効いた作品が
特徴に感じますが
映画はお爺ちゃんが孫娘に
クリスマスプレゼントの自転車を
買いに行くところから始まります
怪しげな店にいくと赤い自転車しか
なく孫は青い自転車がいいと言うと
時間がかかると言われます
爺がクリスマスに間に
合わないかもしれんよと言うと
大丈夫と孫は青色を頼みますが
その青い自転車をその業者は
盗んできて手に入れていました
するとその自転車の持ち主マチルデは
学校に行く足がなくなり母にクルマで
送ってもらおうと思うとクルマが故障
するとそこへ母に軍人の夫から電話が
あり任務で帰るのが遅れると言われ
今日は憂さ晴らしに電車で遊びに行こう
みたいな話になります
丁度その頃
とある企業(役所?)で統計から
傾向を割り出す研究の発表を
していたがまるで成果が
あげられずクビになった
二人のおっさん
右手が不自由な真面目なオットー
変わり者で多弁で一言多いレナート
オットーは会社の荷物をまとめ
地下鉄に乗るとさっきの
マチルデ親子が乗り合わせてきます
オットーはとっさに席を譲ると
マチルデは母に譲ります
するとオットーはサンドイッチと
ジュースをちょっと飲んで捨てる男
ギャング風の挙動不審の男の存在に
気が付くとその直後列車は
衝突事故を起こし大惨事が
起こります
オットーは無事でしたが病院で
席を譲ったマチルデの親子を見ると
どうも母親は亡くなってしまった模様
オットーは自分が席を譲らなければ
こんな事にならなかったという
罪悪感にかられながら帰宅すると
事故の犠牲者にギャング
「ROJ(ライダーズオブジャスティス)」
のボスの裁判で不利な証言をする
ギャングがいたことを知ります
オットーはこの事故が仕組まれた
ものであるという疑念を持ち始め
サンドイッチとジュースを
すぐ捨てた男が怪しいなどと
警察にも相談しますが
相手にされません
妻の訃報を任務地で聞いた
軍人マークスはすぐさま帰宅し
変わり果てた妻の姿を目の当たりに
しますが表情は変わりません
マチルデは悲しみに暮れ部屋の壁に
「自転車を盗まれた」
「クルマが故障した」
などを付箋で書き連ね関連性を
並べて何が原因でこうなったのか
調べようと努力していましたが
整理が付きません
マークスとは普段会っていない事も
あり距離感があります
病院は2人にカウンセリングを
進めますが拒否しますが
マークスは門限を破らせた
マチルデの彼氏を殴ってしまったり
溝は余計深まってしまいます
マチルデには父は
感情がないから何とも思っていない
ように映っています
そんなマークスの所へ
ある日オットーとレナートが
訪ねてきます
この事故が陰謀によるものだと
いう事をサンドイッチと
ジュースをすぐ捨てた
電車の男らの監視カメラの
画像などを証拠に伝えに来ます
レナートは案内した納屋の広さに
驚くなど相変わらず怪しいですが
マークスは話を聞き
更に詳しく調べるよう依頼します
オットーらはもう一人の友人
パソコンオタク・ハッカーの
エメンタールの元を訪ねます
これも神経質の変わり者なのですが
監視カメラの画像から人物を
割り出してもらうと99%以上の
適合率で出てきたのは
「エジプト人のビジネスマン」
でした
オットーらはそんな関係ない
人じゃないと言うとエメンタール
は怒りますがしぶしぶ適合率を
95%に下げるともう一人適合
なんと「ROJのボスの弟」
「鉄道関係の電気技術者」が
適合してしまい間違いないと
確信に変わります
マークスやオットーらは早速
その弟の元を訪ねると
ものすごい勢いで会話を拒否され
再び開けると銃を向けてきました
するとマークスは怒りに任せて
とっさに取り押さえて
首を折って殺害してしまいます
オットーらはドン引きしますが
マークスにとっては妻の仇なのは
わかっていますし死んで当然の
奴だと納得するようにします
特にエメンタールはかつて
自分をいじめてきた存在を
その殺された男に
重ね合わせて激しくなじり
火がついてしまいました
ここでポイントなのは
結局オットーらは統計だ確率だ
と言っていながら目の前で起こった
事象に応じて感情を持ち
その感情に流されていってる
という事です
最も統計や確立とかけ離れた
行動をとっている様に
映画としてデータや傾向を
重視する社会に皮肉と言うか矛盾を
表しています
オットーらのそれまでは社会に
相手にされてこなかったせいで
何も起こらなかったそうした
行動がマークスを通じて
現実に起こってしまったわけです
そんなですが
一同は妻の仇や自分を変えるため
ROJをぶっ潰す決意をします
納屋に入り浸るおっさん集団を
マチルデはオットーらを
カウンセリングの人たちと
勘違いしていますが
レナートはむしろ
カウンセリングを受けてきた立場で
やることはめちゃくちゃですが
徐々に打ち解けていきます
マークスも殴った彼氏と
とりあえず仲直り
この彼氏もいいやつです
ところが弟をなんか殺された
ROJの連中も黙ってはいません
その場で「プレイ中」だった男娼
ボダシュカを縛り上げその場で
見たレナートの顔を聞き出し
マークスらを襲撃します
しかしマークスは相手から奪った
銃であっという間にギャングを
全滅させてしまいます
オットーらは改めて恐怖する
もののエメンタールは逆に
自分たちの理屈が正しいから
襲われたんだと思ってしまい
俺にも銃撃も教えろと言い出します
その後襲撃に時に助けておいた
ボダシュカからROJの
溜り場を聞き出し反対する
オットーを殴り飛ばして
ギャングに返り討ちに行きますが
的ならどれだけでも撃てた
エメンタールは結局人に
引き金を引くことは
できませんでした
できるはずがないのです
マチルデの壁に貼った付箋を
オットーが見つけた時
どんなに偶然でも統計でも
運命でも感情でも関係なく
変えられないものが
ある事をマチルデに告げますが
お前わかってんじゃんと
突っ込まずにはいられませんが
オットーも飲酒運転事故で
娘を亡くし腕を不自由にした
過去があったのです
その後一同はROJ壊滅の
計画を再び練っていきますが
ボダシュカは家事も出来る
使える奴で特にレナートと
仲良く(意味深)なるのですが
殺した弟について聞きだすと
「列車事故前の数日一緒にいた」
とアリバイを証明してしまいます
……え?
てことは?
あのサンドイッチ捨てたおっさんは?
…………最初のエジプトのおっさん?
まあ薄々予想してましたが
そうだったのです
めちゃくちゃ似てる他人でした
サンドイッチを捨てたのは
単純に「マズかったから」
でもコンピュータがはじき出した
答えを否定してしまったのは誰でしょう
オットーはその事実をマークスに
告げると荒れます
バスルームをめちゃくちゃにします
そこで初めてマークスは妻はなぜ死んだ
なぜ亡骸でしか会えなかったのか
と慟哭します
一番感情がないようで一番
堪えられなかったのはマークス
であったことをその様から
マチルデも知ります
するとそこへ彼氏経由で居場所を
調べたROJが襲撃に来ます
負傷しながら孤軍反撃する
マークスですがマチルデと彼氏を
人質に取られ絶体絶命
しかしそこでオットーら
おっさん軍団が訓練された銃で
ギャングたちを脇から斉射し
形勢逆転で難を逃れます
まあでも結局ROJもいい迷惑だった
んですけど…
映画のラストは
願った通りの青い自転車をクリスマスに
贈られた冒頭の女の子が楽しそうに
雪の中を走り回る姿で終わっていきます
その青い自転車が盗まれた
裏側でどんなことが
起こっていたかも知らずに…
でも関係ないのです
誰かの意思が誰かの運命を
決めたとしても関連性は
ないのです
色々掘り下げると深い映画だと
思いますがまずタイトルが深い
"Riders Of Justice"はギャングの名前な
わけでなんで?と思ってしまいますが
「正義に乗っかる者たち」
と意味をとらえると正義と言うきわめて
主観的な感覚に流されて行動してしまう
人々を指すとすると
まさにオットーらはそうなってしまった
のではないでしょうか
事実と異なるにもかかわらずです
AIは統計や傾向によって行動を
決めますが人間にそれだけで行動を決めるのは
不可能という事です
アクション?コメディ?
様々な要素が2時間にギチギチに詰まって
ますがテンポが良く見れてしまう作品
箱は少なそうですがやってたらおすすめです