「【”疑似家族の絆・・。”ペーソスとユーモラスとを絶妙にブレンディングした一捻り半した誘拐映画。ラストシーンは、何とも言えないほろ苦い哀しみの感情が湧き出ます・・。】」声もなく NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”疑似家族の絆・・。”ペーソスとユーモラスとを絶妙にブレンディングした一捻り半した誘拐映画。ラストシーンは、何とも言えないほろ苦い哀しみの感情が湧き出ます・・。】
ー 喉に障害があり、発声出来ないテイン(ユ・アイン:役作りの大増量のため、最初誰だか分からず・・)は親代わりのチャンボク(ユ・ジェミョン)と、鶏卵の移動販売をしながら、違法な遺体処理をして日々を過ごしている。
そんな二人の元に犯罪組織の依頼で、誘拐された11歳の女の子、チョヒ(ムン・スンア)が預けられる。渋々承知するチャンボクであったが・・。-
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・冒頭の縄につるされた男がリンチされ、挙句に殺され、テインとチャンボクに山中に埋められるシーン
- ”うーむ。いつもの韓国ヴァイオレンス映画かな・・。”と思いきや、イキナリチャンボクが、遺体を穴の中に入れた後に”イカン、南北を間違えた!北枕にしなくては・・。”と言いながら渋るテインに遺体の向きを変えさせるシーンを見て、”アレ?コメディ?”と脳内軌道修正を図る。-
・その後も、犯罪組織のテインとチャンボクを良いように扱き使っていた、キムが同じように殺される展開に戸惑いながら鑑賞続行。
・そして、二人に預けられた誘拐された11歳の女の子、チョヒ。本当は彼女ではなく長男を誘拐する筈だったのが間違われたチョヒ。彼女の父親は身代金を払おうとしないらしい・・。
- 男尊女卑を描こうとしているのか・・、と思いきや、またもや物語は予想の右斜め上の展開を始める。-
・チョヒはテインと髪の毛ボサボサのテインの妹と3人で山の中の粗末な家で生活を始める。利発なチョヒはテインの妹に服の畳み方を教える。それまで、足の踏み場もなかった部屋がとてもきれいになっているのを見たテインの驚きの表情。
テインの妹の髪もいつの間にか、綺麗に整えられている。
ー 三人は、一緒に餃子を食べ、写真を撮る。チョヒはテイン一家に馴染んだかと思ったが。-
・チョヒは、児童売買の対象になり、テインは愚かしき夫婦の元にチョヒを連れて行くが、突然自転車で眠らされた子供たちを乗せた愚かしき男が運転する車に乗り込み、チョヒを取り戻す。
- 理由は、分かるよね・・。-
・チョヒの身代金を取りに行かされたチャンボクは、金が入っていると思しきバックを手にするも、焦って階段から転げ落ち、動かなくなってしまう。
- その背後に映る言葉。”ようこそ・・”アイロニックだなあ・・。-
・もう、部屋に鍵を掛けなくなったテイン。だが、チョヒはこっそりと夜に逃げ出す。そして、酔っ払った警官の制止を振り切る。テインはやっとの思いでチョヒを連れ帰るが、彼の部下の婦人警官がテインの家にやって来て・・。
揉みあうテインと婦人警官。だが、弾みで頭を打った婦人警官は動かなくなり慌てて彼女を埋める3人。
- ここは「万引家族」のお婆さんを埋めるシーンを想起させる。-
・犯罪組織の男二人がテインの家にやって来るが、既にテインはチョヒを学校に連れて行ったあとだった・・。と思ったら、土の中から婦人警官の手が出て来て・・。
- コメディですか!-
<今作のラストシーンは切ない。
テインはチョヒを学校に連れて行くが、チョヒは女の先生に何やら耳打ちをしている。
顔つきが変わった先生は”誘拐犯よ!”と叫び、”事情を説明すべき声を持たない”テインは必死に逃げ出す。
街中を抜け、トンネルを抜け、テインが干してくれていたキムの背広を脱ぎ棄てて・・。
チョヒの元に”ゆっくりと”歩いてくる両親と、長男。表情はフォーカスされない・・。
チョヒを助けたテインは必死の形相で走って逃げだし、本来、走って娘の元に駆け寄るべき家族はゆっくりと歩いてくる・・。
今作は、喜劇でもあり、韓国社会の格差、歪みをじんわりと描いた社会派作品でもある。>
<2022年3月13日 刈谷日劇にて鑑賞>