劇場公開日 2021年11月5日

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「二人のキングと二人のクイーン」リスペクト kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5二人のキングと二人のクイーン

2021年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 しばらくレビューを書いてないな~と思っていたけど、映画を観ずに空いていたのは6日間だけでした。ちょっと仕事の“虫”が湧いてきたためで、映画の虫や音楽の虫が鳴りを潜めていたようです(自分の中で一番大きいのはさぼり虫)。この作品には“虫”という言葉が字幕で頻繁に使われていましたが、語られていたのは“demon”。男に頼ってしまうとか、アルコールや暴力に対しても使われていたのかな?邪悪な心という意味なんだろうけど、詳しくは閣下に聞いてみるしかなさそうです・・・

 序盤で興味深かったのはダイナ・ワシントンとの対峙シーン。私の曲を歌うなんて!とブルースの女王(淡谷のり子ではありません)が怒ったところでビビッてしまいました。怒らせてしまったリーも後のソウルの女王へ。

 リーの父親(フォレスト・ウィテカー)の存在感もたっぷりであり、彼の歌もなかなかソウルフルでした。妹たちとの息の合ったコーラスも素晴らしく、ジェニファー・ハドソンだけが目立ってたわけじゃないところもいい。牧師の家庭ということもあり、何かにつけてもゴスペルや神の存在を匂わす作品でもありました。

 キングといえばマーティン・ルーサー・キング牧師。公民権運動にも参加するというリーの思想もさることながら、黒人の解放のために精神的な影響を持っていた彼の死がそのまま人生を変えてしまう。非暴力に徹したアレサ・フランクリンのはにかみや暴力から逃げるような表情が本人の生き写しのように感じられた。これもドキュメンタリー映画『アメイジンググレイス』を観ておいたおかげです。そのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会ライブをラストに持ってくるのも粋な計らいだったと感じました。

 残念だったのはもう一人のキング、キャロル・キングが軽く扱われていたことだろうか。彼女の作品で、オバマ大統領をも感涙させた「ナチュラル・ウーマン」はリーが歌ってこそ心に響いてくるのですが、親交も深かったはずだし、名前くらい出してもらいたかった。

 本人映像ももちろん良かったし、ラストの思い出写真の中にブルース・ブラザーズのジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイドとのスリーショットを見たときに思わず拍手してしまった。これだけで点数上がっちゃいます。魂を揺さぶられる「アメイジンググレイス」はもちろんのこと、ジェニファー・ハドソンの最高の歌声に拍手喝采です。個人的には『ドリームガールズ』のほうが良かったけど。

kossy