「岡山天音がツチヤタカユキそのものだった」笑いのカイブツ sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
岡山天音がツチヤタカユキそのものだった
いい歳をしてリトルトゥースなので、「笑いのカイブツ」が映画化されるのをとても楽しみにしていた。原作は大分前に読んだままなので、細かなところは覚えていなかったが、ポスターの岡山天音を見ただけで「ああ、ツチヤタカユキだ」と思った。それくらい見た目も寄せられていたが、実際に映画を観ても、彼の求道者の様な浸り込み方や不器用さが、原作やオードリーのオールナイトニッポンで若林が喋っていたトークのイメージとピッタリきた。
…きたんだけど、その分、なんか純粋に映画として楽しめなくなってしまったところもある。仲野太賀が若林と重なって見えてくるし、相方の板橋は春日に、作家はサトミツにと、勝手に脳内変換してしまう自分がいて、これは100%自分のせいなのだが、原作やいろんなエピソードを全く知らない状態で観たかった映画だったなと思ってしまった。
笑いってなんなのだろう。嫉妬ってどういう時にどう相手に対して生まれるのだろう。生きづらさは少しでも解消できるのか…等々、いろんなことがよぎってくるが、「ああ、そっか前田旺志郎って演者だったんじゃん」とか、「あれ?ホストクラブの用心棒、ギャロップの毛利か?」とか、更に余計なことを考えてしまう自分にトホホだった。
だが、菅田将暉や松本穂香が演じた人物たちは、原作には登場して来なかった(はず)分、そのままストレートに響いてきた。特に菅田将暉は前評判も聞いていたのだが、居酒屋のシーンの彼の表情だけでじわっと込み上げてきた。このシーンの岡山天音も松本穂香ももちろんすごいが、特に菅田将暉にやられるのは、それまで彼(ピンク)が抱えてきたであろう様々な人生の紆余曲折が、観ている方に一瞬にして伝わってくるからだ。すげー役者だと改めて思わされた。