「共感を超越した感情」笑いのカイブツ ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
共感を超越した感情
世間で相手にされないタイプを地でいく、構成作家ツチヤタカユキ。
自尊心が高くて、人間関係が不得意で、自己実現に向けた狂人的な努力こそがすべて。
1日1,000個のボケネタを創り、伝説のハガキ(投稿)職人と言われた男。
普段はほとんどスポットが当たらない一構成作家の、壮絶なまでの自己中心的な生き様。
最初は究極の私小説じゃないか、と思った。能力があるのだから、もっとうまくおやりなさいよ、とも感じた。
しかし……。なぜか涙があふれた。映画館の館内からも、いくつかすすり泣きが漏れ出ていた。
いつも名脇役だった岡山天音の想定外の熱量にやられたのだろうか。
ツチヤの良き理解者である、人気お笑い芸人(仲野太賀)と半ぐれ(菅田将暉)の段違いとも言える快演に度肝を抜かれたのか。
およそ自分とは全然違うタイプだと突き放して見ているのに、突き放しても、突き放しても、ツチヤが近くに吸いついてくる。そんな感覚が襲ってくる。
共感なんかできやしないと横を向いても、じっとオレの目を見ろ、と迫ってくる。
世間に対して不本意ながら折り合いをつけて、燃えつきることを覚悟で闘ったことのない人間が不覚にも流す涙を、あざ笑うかのように。
これを共感と呼ぶにはあまりにもおこがましい。究極のプロ根性のツチヤに失礼だ。
ただ、ツチヤの捨て身の熱量に、小声ながら、あっぱれ!とだけは言いたい。
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