劇場公開日 2024年1月5日

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「突き抜けた人間の凄みと面白さ」笑いのカイブツ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0突き抜けた人間の凄みと面白さ

2024年1月9日
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鑑賞方法:映画館

何事にも突き抜けた人間の生き様は物語になりうる。それが自叙伝であっても。本作の主人公の突き抜けた部分はお笑い。ハガキ職人やって、テレビの大喜利番組でレジェンドになって構成作家になるという流れ。たしかにすごい経歴だ。天才というより執着型の秀才という印象。いろんなことを削ぎ落としてお笑いだけに情熱を傾けるその姿はやはり凄みを感じるものだった。
一方で「人間関係不得意」な部分は共感できないし、魅力的にも思えない。世の中ある程度のコミュニケーション能力がないと成功はできないよな。大谷翔平や久保建英や藤井聡太やADOが、あんなコミュニケーション能力しか持っていなかったとしたら、あそこまで成功しただろうか。いや、それでも明確な評価基準がある競技やジャンルであれば成功していたかもしれない。そういう意味でお笑いの世界であのコミュニケーション能力は致命的とも言える。もう少しうまくできないのかと焦れてしまうし、切なさも感じた。だからこそ彼が苦悩し悩みあがく姿がドラマになるってことなんだろう。共感はできないし、人間的にも好きと思えない人物の自叙伝的映画なのに、それでも面白いと感じてしまう不思議な映画だった。
あのコミュ障なところを演じていたのが岡山天音だった点もよかったんだと思う。彼の掴みどころのないキャラが見事にハマっていたし、怪演とも言える演技だった。彼の代表作の一つとなっていくのは間違いない。
観終わった後に調べたのだが、彼と一緒にやろうと呼びかけたのがオードリーの若林だったことも驚いた。いや、たしかにベーコンズはオードリーっぽかったけど!彼も人見知りでありながら、お笑い芸人として成功を収めていることにまた別の感慨を覚える。
リアルな存在としてのツチヤタカユキを知らなかったから、彼が病みそうで死にそうなことにハラハラしてしまった。今も活躍していることにホッとした自分がいる。生きてナンボだよ。

kenshuchu