劇場公開日 2024年1月5日

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「社会に認められたいのに、社会に適合できない者の辛さが、痛いほど伝わってくる」笑いのカイブツ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5社会に認められたいのに、社会に適合できない者の辛さが、痛いほど伝わってくる

2024年1月6日
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笑いのネタを考えているのに、主人公には笑顔がなく、それどころか、壁に頭を打ち付けてもだえ苦しむ姿は、最初こそ、そのギャップが面白く感じられるが、見ているうちに息苦しくなる。
やがて、これが、仕事には人一倍の情熱があるものの、社会には適合できない者の物語であることが分かってくる。
それでも、主人公が、自分の好きなことをしてさえいれば満足できるような人物ならば、まだ、救いがあるのだろうが、彼には、社会で認められたり、成功したいという強い欲求があったため、より悲劇的な人生になってしまったのだろう。
社会で生きていくためには、当然、最低限の社交性が必要になるが、主人公の場合は、生きることに不器用であるとか、コミュニケーション能力が低いとかといったレベルの話ではなく、おそらく「○○障害」といった病名が付くと思われるくらいの「対人関係不得意」さで、その言動には、到底、共感することも、同情することもできない。
ここで、自分自身が、世間の常識に囚われて、主人公のような人物を、「生意気」だとか「礼儀知らず」だとか「非常識」だとかといった言葉で、頭ごなしに否定する人間であるということを思い知らされる。
その代わり、この映画の救いとなっているのが、菅田将暉演じる友人や、仲野太賀演じる芸人で、社会に馴染めず、異端とされる人物の才能を活かすためには、彼らのように、そうした異端者を理解し、寄り添い、励ます人物の存在が必要不可欠であるということがよく分かる。
中でも、「世間に笑いを届けようとしているのに、その世間の常識に潰されようとしているのは地獄だ」という菅田の台詞は、強く心に響く。
ただ、それにしても、岡山天音の熱演も相まって、社会に馴染めずに苦悶する主人公の姿を見ていることが、だんだんと辛くなってくる。
それだけに、主人公が東京と大阪を行ったり来たりする終盤は、やや冗長に感じられ、もっとスッキリと、東京から大阪に戻って来るだけの展開にできなかったものかと、残念に思ってしまった。

tomato