「恨の演技」ファイター、北からの挑戦者 はなもさんの映画レビュー(感想・評価)
恨の演技
冒頭、街の中を走るシーンから始まる。
おー、走りが良い、どの位ランするんだろうと期待したが、ランニングシーンは少しでガッカリした。ランする自分としたらもっとランニングシーンを見たかった。そして、主人公ジナの面構えと、小型戦車の様な体付きで軍人だったから身体能力がめちゃ高い。
「南の人って、北の軍人は皆 特殊部隊だと思ってませんか?」と突っかかるように言った所は笑えた。
辛い体験をしながらようやく韓国に来たが、同胞から差別的な扱いを受け、しかも女性である事にも付け込まれてしまう。
理不尽だと感じながらも、静かな怒りを胸に溜める。怒りの原因は、それだけではなく、実は母親が先に脱北し疎遠になっている事もある。思うようにならない韓国での現実。
そんな怒りを拳にぶつけて、食堂の雑用係からボクサーになっていく。ただし、ボクシングシーンは、割に少なく、脱北家族の在り方、脱北者の韓国での立ち位置、成功への生き方をメインにしている。
練習試合を観戦に来た母親を見つけたジナは、パンチを受け仰向けに倒れ込む。ヘッドギア奥のきしめんのような目で母親を凝視続ける。母に対する憎悪と哀しみの複雑な思いを秘めたシーンは、彼女の渾身場面だと思えた。まさに、恨の演技が上手い。
ボクシングという激しさを題材にしてるけれど、モノトーンの静かな流れを感じた映画だった。
コメントありがとうございます。
ファイターという題からボクシングのシーンを想像したんですが、違った事との戦いがメインでしたね。
周りの人との関係やボクシングもこれからどうなるのか描かず終わったので、中途半端、という表現をしました。
ま、これからどうなるか、観た人が感じるのも良いのかもしれませんね。
私にはどうも卑屈過ぎる様にみえました。
一応根は悪い人じゃないというところを表現する様にジムの男の子との件もありましたが、彼以外とのシーンからそういう様子や変化が余り感じ取れませんでした。
今晩は。
私は、この作品は好きでしたね。(3.5ですが4.0にするか迷いました。)
抑制したトーンで、脱北者の韓国での状況をサラリと描きつつ、ジナの韓国及び幼き自分を捨てて韓国でリッチな生活をしている母への屈託した想いの描き方。その母の後ろめたい想いと娘の描き方。
巧いなあ、と思いました。
大作であれば、アソコからジナが韓国チャンピオンに駆け上がって行く姿になるのでしょうが、敢えてそこをジムの元ヤンキーの入れ墨男(でも、優しい)と、館長が優しく見守る姿ー焼肉のシーンなど・・-で留め、ラストの二人で見る海のシーン。
佳品だなあ、と思いましたね。では。