「朝鮮人参と青森県産のにんにく」スープとイデオロギー ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
朝鮮人参と青森県産のにんにく
オモニ(ヤン ヨンヒ監督の母親)のおもてなしはいつでも参鶏湯風の料理。
別にとりたてて手の込んだ料理ではない。でもオモニ特有の魂がすりこまれている。
鳥の中に詰め込むのは、いつでも朝鮮人参と青森県産のにんにく。
滲み出たスープは絶品。
オモニとアボジ(ヤン ヨンヒ)とアボジの夫の三人の食卓。
分断された二つの朝鮮と大阪の三つの国にそれぞれの思いを抱くオモニとアボジ。
そして、その思いに共鳴している夫。
済州島事件の忌まわしい体験を語るオモニ。
三人の食卓に、朝鮮半島の歴史が静かに脈打っている。
歴史の生き証人の母娘に寄り添う、13歳年下のアボジの夫の献身ぶりが印象的だ。
朝鮮の民族服を着てアボジと写真に納まる。
彼は語り継いでいくであろう。
南北の政治事情に翻弄され、北に住むアボジの兄弟、そして認知症で記憶が定かではなくなったオモニの壮絶な過去を。
何気ない食卓の中で、夫の不思議な安定感が、オモニとアボジの歴史にそっと寄り添う。
コメントする