劇場公開日 2022年6月11日

  • 予告編を見る

「壮絶な母(オモニ)の半生を追体験する娘」スープとイデオロギー Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0壮絶な母(オモニ)の半生を追体験する娘

2024年2月4日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

本作は、監督の私小説風ドキュメンタリー映画だ。

在日朝鮮二世のヤン・ヨンヒが、監督・脚本・カメラを務め、大阪に住む実母を追い続けた。

「スープ」
監督の母(本作の主役)が、監督の婚約者に振る舞うために連日作るスープ。
鶏を1羽まるごと買って、中にニンニク、ナツメ、朝鮮人参を詰め込む。仕込みと煮込みに軽く半日はかかっている。
ついには、婚約者の男性(香織さん)も、自力で作れるようになるのが可笑しかった。

「イデオロギー」
既に亡くなっている監督の父、そして母の二人共が熱烈な北朝鮮シンパであり、朝鮮総連を通じた帰国事業で監督以外の子供たちは北朝鮮にいる。
亡父の遺骨も平壌にある。

なぜ、そこまで北朝鮮びいきなのか、娘である監督にもナゾだった。
なぜなら、大阪で生まれた母は日本の敗戦直前、北朝鮮ではなく、済州島に疎開して3年間住んでいたからだ。
済州島は韓国に属している。

そのナゾは、後半に明かされる。

本作の撮影中に刻々と進行してしまう母の認知症。
そんな中、母は娘(監督)を伴って約70年ぶりに済州島を訪れる。
母が乗る車椅子を押しながら、娘は母の若かりし時のあしあとを辿る。
淡々と抑制的だからこそ、胸に迫るものがある。

母(オモニ)は、韓国でも、正装の際には必ず左胸に北朝鮮のバッジをつけているのが印象的だった。

Haihai