「人生は冷酷だ。」スティルウォーター 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
人生は冷酷だ。
罪に問われた娘の無実を信じて、言葉もわからない異国でもがく父。その異国が、個人主義のフランスでも特に治安のよろしくないマルセイユで、奮闘する父が、世界は自分たちがすべてと思い込んでいる(そう僕が思い込んでいる)アメリカ人という妙。ニューヨークのイギリス人よりもさらに孤独感と無力感を感じる設定だ。
人間、今の自分の人生の立ち位置に不満がある人は多い。だけど、「人生には、希望を持つときと、受け入れるときがある。」と言っているように、いい意味での運命と受け入れることができれば、心の持ちようは大きく変わる。そんな人生観の変化を、言葉少ないビル(マット・デイモン)から伝わってきた。だからこそ、故郷の景色は娘には同じに見えても、ビルにとっては違って見えたのだと思う。
殺人事件の真相についての描写があの程度なのは、物語の本質が事件を解決することではなく、人が自分の人生をいかに受け入れるか、に置かれているので、構わないのだろうな。
マット・デイモンの滋味あふれる演技が光る良作。
それはそうと、オリンピック・マルセイユの熱烈なサポの口から3番目に名前が上がるほど、酒井が愛されていたことがわかって嬉しかったな。
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