「固定概念を壊してユーザーに解釈を委ねる体験型映画」Pure Japanese kocchi★こっちさんの映画レビュー(感想・評価)
固定概念を壊してユーザーに解釈を委ねる体験型映画
制作者ご本人も言われている通り、賛否両論がある映画ではあると思う。ただ、これだけ難しい内容を日本の映画で作った制作陣の熱量はすごい。内容が盛りだくさんなだけに、ただならぬ情熱を感じた。
4回映画を観て感じたことは、アトラクションのようである…ということ。
時間は80分と短く、展開も早い。
ジェットコースターを上って上って…急降下していくようなイメージ。
その急降下の興奮をまた得たくて再度体験したくなる。そういう作りのように感じた。
これ以上長ければだれてしまうシーンもあったかもしれない。
通常同じ映画を繰り返し見ることはしないのだが、苦にならないのは展開の早さと、この絶妙な長さにあると思う。
<アクションシーン>
バイクで登場するシーンから一気に暴力が加速していく流れは圧巻
アクションに見ごたえが出ているのは、やはり陣内と立石の説得力のある身体
極限まで鍛え上げられた身体は戦う身体そのもの
原作のある漫画やアニメの実写化映画もアクションシーンに興奮するものはあるが、キャラクターイメージを崩してはいけないので、日本では戦いに特化したビジュアルを追求している映画は少ない。立って向かい合うだけで緊迫した空気感を作れるのは本物だからだ。
<主人公=正しいとは限らない>
主人公は善人である・正しい存在・弱気を助ける・ちょっと悪くても結局いいやつみたいな固定概念が付きまとうが、この映画はその概念を覆すだけの衝撃がある。
ヒーローである主人公が何でも最終的に解決してくれるような特撮のようなストーリーを想像して観ていると後半からゾクゾクするような展開になり、最終的にあっけにとられるかもしれない。
立石はいい意味で私たちの期待を裏切ってくれるのだが、趣味はエア切腹・日本刀集め・虚言癖などなど…まさにヤバイやつである。ヤバイがピュア。立石は真面目にやっているだけ…というのがさらに狂気を感じさせる。サイコパスという言葉で片付ければそれまでだが、こうなるに至った経緯=彼の人生を紐解くことで問題提起が見えてくる。そのヒントは冒頭から散りばめられているので、謎解きをするように目を凝らしてみることをオススメする。
「なぜ」「どうして」を考えさせられる、考えるところまでがこの映画の醍醐味だ。
<キーアイテム>
ちょっとふざけてる?いや真剣?どっちにもとれるアンバランスさが魅力。
日本人度を測るPJキットというキーアイテム(ぴゅあじゃぱにーず)とひらがなで書かれたパッケージがなんとも…
敢えてのチープさなのか、可愛さが逆に不気味で狂気じみている。
ヤクザがこれで大儲けしようとしているのだが、実際に売っていたら手を出したくなるような面白いアイテムだ。それを格下のヤクザがばらまいているのもなんともありそうでリアリティがある。
診断好きの日本人の心を簡単に掴みそうなので、ぜひ実際にも販売してほしい。
<総評>
すぐ側に人間が立ち入れないような深い自然があるロケーションも相まって終始独特の空気感を醸し出している。リアリティと非リアリティが混ざり合う不思議な空気感に魅力を感じる人も多いと思う。神が住む土地でハチャメチャな暴力が繰り広げられる構図が何とも言えない。観終わった時にはどっと疲れが押し寄せてきた。制作者の意図を読み取るのに頭を使い、アクションで手に汗握って五感を刺激されるような映画なので全身で体験しているような感覚になるのだと思う。これはぜひ映画館で体験すべき映画だ。