「どの人物とも重なるものがあり涙が止まらなかった」ディア・エヴァン・ハンセン 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)
どの人物とも重なるものがあり涙が止まらなかった
予告編に惹かれ、それ以外の予備知識無く鑑賞しました。
「誤解から始まる物語」
「ミュージカル」
ということで、もっとコミカルな話かと思っていたのに意外とシリアスで心に刺さりました。冒頭の「誰か僕に気が付いてよ」という歌、リンゴ園での架空のエピソード、偽メールをでっちあげるシーンまでは殆どボロ泣きでした。エヴァンが歌い上げる「こうだったらいいのになぁ」が切なくて切なくて。偽メールシーンは陽気で笑える曲なんですけどね。笑いながら涙が止まらないという不思議な状態になりました。
実は私もうつ病です。幸運にも私はまだ生きているし、周囲に自死した人もいません。ですがどの人物の心情もわかる部分があります。シンシアとは同性で年も近い。エヴァンの寂しさはすごくわかる、アラナのようにうつ病に見えないけど頑張っている人もたくさんいる。特にコナーはどうしても周囲につらく当たってしまう自分に絶望して命を絶ったのだと思います。
エヴァンがしたことは良くないことだったけど、彼は本当にいい奴だし、彼の嘘は人を救ったし、彼の弱さは誰でも持つ弱さです。私はエヴァンを責められません。自分は最後までこの嘘がばれなければいいのに、物語で結ばれた人々との離別がなければいいのにと思いました。ストーリー上ありえないのですけれど。
映画の最後に「悩んだら窓口に相談しよう」というようなメッセージが出ます。「そのメッセージいる?」みたいな違和感がありました。自死で大切な人を失った人が関係者にいるのかな?
とはいえ、私もメッセージに同感です。孤独に悩んだら誰かを頼ってほしい。悩んでいるのが本人なら受診し、家族なら「甘えだ」などと言わずに受診を勧めてほしい。精神科の薬はとかく悪者にされやすいです。ですがお酒の勢いで眠ったり、ドラッグなどで気を紛らわしたりするより、処方薬の方がはるかに良いと思います。何も後ろめたく思うことはないのです。
追記
アラナに自分も大変なんだから無理しないでいろんな活動を控えたらいいのにと思わないでも無いです。しかしアメリカは積極的にリーダーシップを発揮しないと評価されない社会らしいです。だからアラナは頑張るんだろうな。弱っている人は頑張らなくても良いと言ってあげられる社会になればいいのにと思いました。