劇場公開日 2021年9月17日

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「自分をどう見せるか、どう見られたいか、という葛藤を率直に描いた一作」トムボーイ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 自分をどう見せるか、どう見られたいか、という葛藤を率直に描いた一作

2025年6月16日
PCから投稿

後年『燃える女の肖像』(2019)で映像作家としての卓越した手腕を発揮したセリーヌ・シアマ監督の、長編2作目にあたる作品です。

少年少女たちの瑞々しい姿、美しい光で描き出す情景、そして少年としてふるまうロール(ゾエ・エラン)を中心に展開する物語など、その演出力はこの段階で既に確固としたものがあります。

とはいえ『燃える女の肖像』で見せたような、いくつもの要素を重層的に織り込んでいく複雑かつ濃厚な描写というよりも、描きたい主題を率直に表現するというある種の素朴さも垣間見えるところもあり、シアマ監督の作品をこれから辿ろうとする人にとっては格好の入り口となっています。

中性的な顔立ちのゾエ・エランが本作に強い説得力と魅力を与えているのは確実で、その強さと美しさを兼ね備えたまなざしは忘れがたいものがあります。

どうしてロールが新しい場所で自分を少年と見てもらおうとしたのか。作中でもさまざまな示唆を含んでいるものの明確な説明には踏み込んでいないので、観る人によって解釈がいろいろできそうです。

どうも少年たちの輪の中に入りたい、というよりも、女の子に異性として見られたい、恋愛をしたい、という気持ちが強かったように思えたのですが、どうでしょう!?

シアマ監督の『秘密の森の、その向こう』(2021)も、コンパクトかつ主筋が分かりやすい作品なので、続けて観ても面白いかも!

yui
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