「強制送還に怯えて」ブルー・バイユー 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
強制送還に怯えて
とても考えさせられ辛かった。
(そしてラストは子役ちゃんの迫真の演技に泣かされました)
ルイジアナ州ニューオリンズ。
3歳で韓国からアメリカに養子に出されたアントニオ。
アントニオ(ジャスティン・チョン=主演兼監督)は、妻のキャシー
(アリシア・ヴィキャンドル)と義理の娘ジェシーの3人で、
貧しいながら幸せな日々を送っていた。
ところが、ふとしたキッカケで不法滞在者扱いをされ、
元の国(韓国)へ強制送還措置が命じられる。
アメリカでは2000年頃まで、養子に市民権を与える制度がなかった。
そのため2000年以前に養子としてアメリカに渡った子供たちには
市民権が与えられておらず、
2000年以降に適切な手続きをする必要があった。
しかし多くの養父母はその手続きを行わなかったため
市民権のないまま成長。
裁判で、居住実態があると主張したくとも5000ドル以上の
裁判費用がかかる。
法律のはざまに落とされ、アメリカ国籍のない人は、
今日もどこかで強制送還されている。
国に帰ったところで住む家もない。
言葉も喋れない。
自分にはなんの落ち度もないその悲劇を、
アントニオという男の場合を例に、
問題視した作品です。
義理の娘のジェシーは実父の影に怯えているが、
アントニオとはとっても仲がいい。
ルイジアナのブルー・バイユー(湿地になっている青い入江)で、ジェシーに、
「絶対に置いてきぼりにしない」
と約束する姿はその後を知っているだけに辛い。
ブルー・バイユーとはアントニオに微かに記憶のある韓国の河
でもある。
アントニオが覚えているのは、母親が自分を落とそうとしたか、
誤って落ちたか、必死でもがいている記憶があるのだ。
美しい映像の中に「痛み」のある作品だった。