「愛するからこそ別々の船に乗る。」ブルー・バイユー はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
愛するからこそ別々の船に乗る。
アメリカの養子縁組、移民問題を描いた力作。韓国で生まれ3才で養子に出されてから30年以上「アメリカ人」として生きてきたアントニオ。ある騒動をきっかけに国外追放を命じられ強制送還の危機に立たされてしまう。アメリカの国際養子縁組に隠された制度の落とし穴とは。自分は一体何者なのか。
脚本、監督、そして主演も務めたジャスティン・チョンは敢えていばらの道を選んだ。確かな家族への愛を見せる一方で、まるでそれに相反するかのような行動をとるアントニオ。とても同情などできない。不可抗力による強制送還という不条理を描くならもっと共感できる主人公の方がアプローチとしては説得力がある。でもそうしなかった。この闇こそがアメリカだと言わんばかりに。
はびこる人種差別に抗う時、正しさだけでは解決しないこともきっと多い。「家もない」「知り合いもいない」そんな国に追放される恐怖は誰が受け止めてくれるのだろう。確かに言えることは、それはアメリカではないということ。
ラスト5分は涙で息が止まりそうでした。2人の娘が成長してゆく過程で頼るべき父親は傍にいるだろうか。エンドロールで知る現実の一端。これが今現在進行で起きている事だと思い知らされる。
ジェシーがパーカーを見て「パパと似ている」と言った。その言葉がなんだか忘れられない。
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