劇場公開日 2022年2月11日

  • 予告編を見る

「この先、彼の手がける映画をずっと追い続けなければと心に決めた」ブルー・バイユー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この先、彼の手がける映画をずっと追い続けなければと心に決めた

2022年2月12日
PCから投稿

世の中には限られた人にしか描くことのできない物語が存在する。韓国系アメリカ人として生まれ育ったジャスティン・チョン(監督、主演、脚本)が辿り着いたのもまさにその境地。もし彼が映画化しなければ、本作が描くマイノリティの文化背景や社会問題について我々が知る機会は失われたかもしれない。この映画で特に胸を打つのは、哀しいほど美しく幻想的な芸術性と、激しさと繊細さが相まった出演者の演技、そして主人公が自身の陥った状況を重ね合わせることでかつて実母の辿った心情に触れるという構造だ。ベトナム出身の女性と巡り合う流れも「移民」の一言では決して窺い知れない”彼らがここにいる理由”を浮かび上がらせる。そういった過去と現在、生と死、光と影を織り交ぜながら、あの全てを包み込む家族の尊さ、とりわけ娘役の放つ眩いほどの存在感を添えるのだから、これはもうたまらない。その場で拍手を送りたくなるほどの素晴らしい名演を見た。

コメントする
牛津厚信