「血の繋がりと親子」ブルー・バイユー ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
血の繋がりと親子
前夫との間の娘にパパと慕われている、養子縁組によって3歳から米国にいる韓国生まれの男性(遠藤章造似)。妻の出産を控えてタトゥーアーチスト以外の仕事を得ようと就活しても窃盗の前科があり難しい。親子3人仲良く旅行を夢見てスーパーで買い物中、巡回中の警官の前夫と同僚に出くわす。実父が嫌いな娘と揉めてる同僚を見て、韓国人の主人公に嫌悪感を丸出しにする警官。無視をする主人公にカッとなり捩じ伏せ、連行してしまう。去年のアジアンヘイトを思い出す。動画でも撮ってあれば…
そのまま、主人公は義理の両親の手続き不備により不法滞在と判定され、国外強制退去か控訴(負けたら最後)の二者択一、2000年に法改正があったが、1980年代の養子縁組には不適切な例が多いとのことで遡って適用はなし。控訴にも弁護士費用5000ドルが必要となる。
この2点を大きなテーマに、生まれてくる妹にパパの愛情が行ってしまうのではないかと思う、パパと同じ黒髪になりたい娘、同じアジア系でも主人公とは対照的なベトナム難民で癌を患って余命少ない女性と父親、その一族、生みの親である若い女性が池で赤ん坊(主人公)を沈める風景、養子先の義理の父親の虐待から主人公を守ってくれなかった義理の母親との関係などが描かれる。
今の暮らしを続ける最後の望みであった聴聞会に、義理の母親も来てくれていたのに、立ち寄ったカフェの駐車場で前夫の同僚達に暴行を受けて本人が出席せず、そのまま強制退去に。
バイク仲間が暴行の原因を知り主人公の国外退去を手助けする。空港で出国の列にいると、妻と娘が追い付く。そこに更に前夫が追っかけてくる。ヒヤリとするが妻の前夫は警官なのでもしかしたら「セイフ・ヘイブン」並の悪人かとも思ったが、同僚ほどのバカではなく、娘を抱きしめて許しを乞い、愛していると伝えるのだった。黙ってそれを受けとめる娘と実の父親の様子を見て、主人公は一人で出国する決意をする。着いて行くという妻を振り切り、1人で歩き出すとしばらく後、娘が「置いて行かないで!」と叫び、堪らず走って引き返し、娘を抱き締める。しかし別れを惜しむ時間はなく、握った手を無理矢理引き離して去らなければならなかった。くー、こんなことが空港では日常的に起こっているとしたら堪らんなー…
最後、主人公のように養子縁組から数十年後に強制退去になった実在の人達が映し出される。
アリシアちゃんも美しさを封印し、生活に追われている普通の女性を演じている。
深い映画だった。