「ディズニーの映画でやるような内容じゃない」ミラベルと魔法だらけの家 Spiさんの映画レビュー(感想・評価)
ディズニーの映画でやるような内容じゃない
この映画のテーマはなんの取り柄もない自分自身でも見つめ直せばきっと大切な意味がある、というもの。
これをテーマにするのはご立派なことだと思うし人権が叫ばれてる昨今にはぴったりな内容に思える。
ただ言ってしまえば最近の差別を撤廃する世論が作らせたような作品であり、それ以上の魅力というものが感じられない。テーマはこのままでいいにせよ、普通だったら脚本の時点で書き直し、もしくはボツになるくらいに話の展開に起承転結もないし視聴者の想像を裏切る驚きもない。
それぞれ能力を持ってる家族たちが各々の特徴を活かして大きな困難を乗り越えていく展開にするのが定番だが、ただ魔法を見せびらかすだけで登場させる意味を持っていない。人数だけ並べ立てたところでほとんどのキャラクターが個性なんてあってないようなものになってしまってる。
ストーリーもキャラクターも立っていないからなのだろうか。いつも以上にミュージカル成分で誤魔化そうとしているが、魅力的な曲というのも用意できていない。
本来であれば映画の質にとことんこだわるディズニーならこの作品は日の目を見なかっただろう。とにかく話の展開のクオリティが低く、言ってしまえばブラッシュアップする前の状態のまま作り上げてしまっている。それは最近の社風のせいなのか、動画配信サービスのせいで一個一個にクオリティを割けなくなってきているのかはわからないが、正直ディズニーの映画作品として作るような内容に到底追いついていない。
繰り返すがテーマが悪いのではなく、もっと改善しなければならない部分があるのを放棄して無理やり作ってしまったのが問題なのだ。起承転結をしっかりしてキャラクターそれぞれにしっかりと活躍の場面を与え、ヒロインの魅力というものを引き出しさえすれば問題ない。それは簡単なことじゃないのは重々承知だが、それを続けてきたのがディズニーなんじゃないのか。まさか特別な作品なんか作れなくても自然体な映画が出来ればそれでいいと自分たちに言い聞かせるために作ったとでもいうのか。
このような作品を普通にリリースしてしまっている今のディズニーはもう少し危機感を持った方がいい。