「ニュートンとゲーテの色彩理論の対立を少しだけ勉強して鑑賞すると良い」ミラベルと魔法だらけの家 うしねこ:映画の『画』を評価するタイプさんの映画レビュー(感想・評価)
ニュートンとゲーテの色彩理論の対立を少しだけ勉強して鑑賞すると良い
ウォルトディズニーレーベルの最高傑作かもしれない。
子供でも理解出来る物語表層の家族のお話、現代的寓意のお話、原案小説のお話、コロンビアの歴史のお話、これら4つの筋の鑑賞方法の提示と西洋文化史を踏まえた作劇が見事。
現代アート作品のタイトル&テキストのように読解に欠かせない先行作品を提示してくるけれど、それらの作品メッセージを受け取れなくても楽しめる造りになっている。
音楽まで良いと来てるので、おそろしく完璧な作品。
直接の引用かは不明だけど、タイトルはおそらく以下の詩のようなイメージが元になっている。
Stufen (Hermann Hesse)
"Todo comienzo tiene su encanto."
"Und jedem Anfang wohnt ein Zauber inne"
(↑スペイン語と原文)
コロンビアの国旗はフランシスコ・デ・ミランダ(Francisco de Miranda)という人がゲーテの色彩理論に基づいてデザインしたとのこと。
ゲーテ的な色彩理論(色彩心理学)で設計された1-2世代目とニュートン(光学)的な色彩理論で設計された3世代目を示唆するアイテムが眼鏡(spectacles)。
もう一点読解に欠かせない要素として「百年の孤独」があるけれど、こちらと組み合わせて読解すると社会制度に関する非常に強いメッセージが浮かんでくる。
主人公の眼鏡や有色人種主人公であることが辺な方向で話題になったけれど、そういう表面のお話で造られたわけではないので、公開当時や今現在までまともな評論が広まらなかったのが残念。
ポップカルチャー映画側の映画評論が観客ウケを狙うだけで思想史や先行作品についてまともに道案内出来ていない証拠だと思う。
00年代までのディズニーは主人公やヴィラン、装飾意匠の由来にやや鈍感だったけれど、今現在は優れたアドバイザーが着いてると思う。
西洋美術史や現代アート方面に疎い評論家には扱えなくなっている。
鑑賞前に事前知識一切入れずに見たけれど、読解に不可欠な鍵に気付かせたのがすごいと思う。(百年の孤独は未読です)