「斬新な「題材の設定」で攻めている“ディズニー・ミュージカルアニメーション映画”。考えすぎずに見るのが正解か。」ミラベルと魔法だらけの家 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
斬新な「題材の設定」で攻めている“ディズニー・ミュージカルアニメーション映画”。考えすぎずに見るのが正解か。
本作は、ミュージカルアニメーション映画としては、さすがはディズニー!といった感じで、アニメーションの動きや音楽の心地良さには文句の付け所はありません。
吹替版では、ミラベルの長姉・イサベラ役の平野綾は、歌も非常に上手く、やはり本職の声優が、よりクオリティーを上げる存在になっていると実感しました。
さて、本作は、題材の設定が「ヒロイン以外の家族全員が魔法を使える」という通常とは“逆設定”になっている点は、かなり独自性があって興味深かったです。
これをどのように面白い作品に落とし込めるのか楽しみにしていましたが、なぜミラベルが窮地を救える存在なのか、という必然性の部分が難しかったように感じました。
メッセージ性としては「誰にでもそれぞれの存在価値がある」ということだと思われます。
その意味では、唯一魔法を使えないミラベルだからこそ、魔法が消えかけている世界を救える存在になれるのかもしれません。
魔法が使える他の家族は、自分の力が弱くなっていることに恐怖などを覚え、頼りない一方で、ミラベルは変化がないので、相対的に家族のために力を発揮しやすい存在となれるからです。
このように、本作は、この「グラデーションの部分に意味がある」のですが、グラデーションは違いが見えにくく、クッキリしない点が本作の難しさだと思われます。
そのため物語の必然性を追求し出すと、やや爽快感に欠ける作品に見えてしまうのかもしれません。
とは言え“ディズニー・ミュージカルアニメーション映画”として、深く考えすぎずに「ミュージカルとアニメーションの動きを楽しむ映画」として見れば満足度が高い作品なのは間違いないでしょう。
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