劇場公開日 2022年9月16日

「いかにもTV的な、視聴者受けを狙ったオチのオンパレード。」沈黙のパレード とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5いかにもTV的な、視聴者受けを狙ったオチのオンパレード。

2023年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

単純

寝られる

原作未読。
改悪しているのかと思ったら、原作通りなんだそうな。かなり分厚い原作を”うまく”整理して、薄っぺらくしたと、他の方のレビューで知った。

初ガリレオ。ドラマも、映画前作・前々作も未鑑賞。
ガリレオのファンなら、主要3人の掛け合いを楽しめるんだろうな。
いつもの設定のひねりに歓喜したり。

最初ののど自慢の歌唱から、少女を取り巻く人々のアンサンブルに引き込まれたはずなのに、
機内鑑賞。映像も音響もよくないところで、かつ、疲れとお酒、高度が相まって、途中、寝落ち。
あ、と、とび起きたら、事件の真相解明していた。
 ここだけ見ると、間が抜けていていてもついていける。
 他の方のレビューを読んでいると、ミスリードが多くてと書いている方もいるが、そうか、ミスリードを知らない分、ついていけたんだろうな。

とはいえ、

前半、大げさにふった第1の殺人の真相究明はどうなった?フリだけでスルー?
 ふてぶてしい蓮沼の態度でもむかつくが、”真犯人”と決めつけるには、疑問が。寝ている間に解明されていたわけではないし。
 他の方のレビューを読むと、ある登場人物の行動に繋がっていくらしいのだが。
 『64』のように、その方の地道な行動で、少しでも証拠が集まって真相に近づけたならまだしも…。
 この映画だけで言うならば、蓮沼と言う人物のエピソードがなおざりなので、第3の殺人のトリックのために必要だった設定に見えてしまう。

そもそも黙秘すれば起訴されないって。
 袴田事件は”自供”があっても、”証拠”で覆る。つまり、口を割らせられなかった責任じゃなくて、証拠を集められなかった責任?それを、”警察が生んだモンスター”って、言われても…。
 立件できなくて臍を噛んでる刑事ドラマや検察ものをTVや映画でよく見ている身には、これだけの描写ではこのあだな、納得いかない。
 警察官だった父との確執から、蓮沼の人格形成がこうなったことを言いたいんだろうけれど、舌足らず。映画だから表現足らずか。

第2の殺人の真相解明も、一見証拠があるようだが、憶測だらけ。
 しかも、ここがこの話の肝なのに、人間性・人間関係が描かれていないから、なんだそれとシラケてしまう。
 実はと展開した時の犯人。なのに、その後も何喰わない顔で、あの”場”に顔を出して笑っていられるのかが、一番信じられない。本気で”失踪”したのだと心配していたのだろうか。でも、現れれば、自分のやったことが仲間にばれるのに。その葛藤をきちんと描くだけでも、見ごたえあるドラマになるのにおざなり。
 だから、その後の実は…は、カタルシスを生まない。視聴者受け狙いの設定にしか見えなくて…。
 原作はもっと丁寧に積み上げているんだろうなあ。
 でも、映像なら、小説でそれ相当の字数を要する表現でも、一瞬で魅せきることだってできるのに。

第3の殺人の真相究明は、鑑識・科捜研で良くない?

そして、湯川博士の登場の仕方のご都合主義さ。
 インタビューにあるように二人の友情が織り糸ならば、他のレビューに書かれているように湯川博士の人間味成長譚なら、もっと違う登場のさせ方の方が納得するのに。

『沈黙のパレード』というタイトルに、心理戦の応酬と期待してしまったのも悪いのだろう。
”沈黙”はたんなる”黙秘”だし、”パレード”はお祭り。その二つは並列。肩透かし。

寝ていた部分を再視聴すれば、
もっと映像・音響環境の良い場所で再鑑賞すれば、
また、違った感想になるのであろうか。
でも、時間の無駄に思えてしまう。

とみいじょん