「愛するが故に沈黙する人々」沈黙のパレード しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
愛するが故に沈黙する人々
"ガリレオ(劇場版)" シリーズ第3作。
TC EXTRA LARGE SCREENで鑑賞(レイトショー)。
原作は既読。
ガリレオ・ファンとしても、ましゃ(福山雅治)ファンとしても、9年ぶり、待ちに待った待望の新作となった本作。
劇場版ならではの重厚な雰囲気はそのままに、謎解きも人間ドラマもこれまでにない豊穣さがあって感動の嵐でした。
高笑いからの「さっぱり分からない」「実に面白い」といつものセリフを口にした湯川先生に、「あぁ、ガリレオが帰って来たんだなぁ…」ととても感慨深くなって自然と涙が。
「オリエント急行の殺人」テイストを匂わせておいて実は…な複雑なプロットを誇る原作をどう映像化するのかと気になっていただけに、期待を上回る良質さに惚れ惚れしました。
それは、西谷弘監督の堅実な演出と福田靖による見事に原作から換骨奪胎された脚本のおかげだろうな、と…
冒頭において並木佐織がどれだけ愛される存在だったかを端的且つエモーショナルに呈示したことで、祐太郎たちへの感情移入が容易になる構成と演出が巧みでした。
蓮沼が突然なみきやを訪れ、和やかだった雰囲気が緊張感漂うものに一変するシーンでは、登場人物の紹介と同時に、今後の展開の伏線まで視覚的に挿入してしまうと云うとても情報量の多い場面となっていたにも関わらず、繊細な演出と細かいカットを繋ぎ合わせる編集の妙によって、分かり易く構成されており、これぞ映像化の醍醐味だなと思いました。
登場人物が多い分、各々の描写が薄い気がする個所もありましたが、そこは行間を読んで脳内補完しつつ観ました。
これまでの劇場版でも共通して愛がテーマとなっていましたが、本作の愛は様々な形を持っていて重奏的でした。
普段ならば犯罪とは無縁でいられた市井の人たちであったはずなのに、大切なものを理不尽に奪われた時、怒りや悲しみが交錯し、蓮沼への憎悪が膨らんでいくことに。
愛するが故に罪を犯し、沈黙した人々の想いに、愛と云う感情の奥深さと底知れなさを、改めて思い知らされました。
複雑に絡み合った謎を紐解いていく湯川も、推理機械ではない人間味がたっぷりで、これも劇場版ならではだな、と…
草薙刑事を見守り、助けようとする湯川の姿に、友情を大切にする彼の優しさを感じてとても感動させられました。
真犯人に推理を突きつける場面でも、「容疑者Xの献身」での後悔を経た上での行動と想像され、グッと来ました。
ましゃ自身年齢を重ねた分、役柄にもそれが反映されているようで、深みのある演技が素晴らしかったです。
犯した罪は決して許されるものではないが、そこにあった愛だけは確かで、正しく尊いものだったのだと、そう思うことさえ出来たら、救われるものがあるかもしれない。
ふと、そんなことを思いました。
[余談1]
カムバックした内海刑事も両者を繋ぐ役割として大活躍。
新人時代とは全く違う風格にシリーズの年輪を感じました。
[余談2]
絶対的悪である蓮沼を、異様な雰囲気を漂わせながら体現していた村上淳も素晴らしかったですが、並木祐太郎役の飯尾和樹の演技に感服させられました。普段の芸風からは想像出来ないような上手さに、大変驚きました。
[以降の鑑賞記録]
2023/02/05:U-NEXT(レンタル)
2023/08/11:Blu-ray
2024/03/30:土曜プレミアム(地上波初放送)
※修正(2024/03/04)
ましゃさんへの愛が滲み出ています❤️
しかし、あの蓮沼の殺害方法と物理学教授を引っ張り出して来て関連させるところに、ムリヤリ感を感じてしまいました。
他キャストの方たち仰るように皆さん良かった。本シリーズの柴崎コウ、実に素晴らしい。