劇場公開日 2022年6月17日

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「あくまで「ファン」を試している。しかし侮るなかれ」怪盗クイーンはサーカスがお好き さつこさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0あくまで「ファン」を試している。しかし侮るなかれ

2022年6月18日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

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まず、「映像化してくれてありがとう!」と言いたい。
というのも、「児童書のアニメ化はファン数が読みにくい」という理由で、はやみねかおる氏の別作「夢水清志郎」シリーズ含め、数度企画倒れがあったそうな。
そのため、はやみね氏は「今回もだめなのか」と半ば諦めていたそうだし、本作のプロデューサーの方も企画に難儀したらしい。

はやみね氏の著作をお読みの方ならお分かりだと思うが、氏の作品はそれそのものが、むしろ氏そのものがある種の「エンターテイナー」であると考えている。
「子どもたちに面白い本を読んでもらいたい」から児童書作家を目指すのも「らしさ」が出ているといえよう。

そろそろ話に入ろう。
本作ははやみねかおる氏の代表作「怪盗クイーン」シリーズより、第一作である『怪盗クイーンはサーカスがお好き』をアニメ化したものである。
劇場版ではあるが、あくまで「OVA」のため、上映時間は60分ほどと短い。
演じるのは、主役でもある謎の怪盗・クイーンに大和悠河氏、そのパートナーであるジョーカーに加藤和樹氏、そしてクイーンの乗る飛行船「トルバドゥール」のAI・RDに内田雄馬氏。多くの人々が、色鮮やかに声で作品に息を吹き込んでいる。

正直に話すと、不安はあった。
劇場版とはいえ「OVA」だから、原作のポテンシャルに見合うだけのものを観られず、ガッカリするのでは、予告編だけ力を入れてあとは……、という不安である。

しかし、そんな不安は観終えた今、口にするのもおこがましい。
60分という短い時間でありながら視聴者を飽きさせることなく、満足度の高い映像、そして「そう!これだよ、これ!」とまるで生きているかのようなキャラクターたち。あの声で「クイーン」が喋るとか、どう考えても卑怯である。悔しい。
ああ、これは余すところなく、出来うる限り「原作愛」を詰めたのだ、と。細部に至るまで面白くないところがない。
これは減点してしまうのがもったいない!と思うほどに、いやはや、楽しませていただいた。

おそらく、本作で試されているのは「ファンの熱量」だろう。
なので、観終えた方はぜひ、感想を発信してほしい。それが制作者にとって何よりの喜びだからだ。
そして、これから観るという方、損はさせない、といちファンとして太鼓判を押しておこう。そして、あわよくば、劇場でグッズを買ってほしい。身も蓋もない話、「数字」が出れば制作者が喜ぶ。

上映館も少なく、おそらく長期間の上映はないと思われるため、新鮮なうちに観ることをオススメしておこう。
そして、願わくば「次」に繋がってほしい。

あなたが、良き「夢」を見られますように。

さつこ