「親の言うとおりに生きてきたというコンプレックス」ぬけろ、メビウス!! かみさんの映画レビュー(感想・評価)
親の言うとおりに生きてきたというコンプレックス
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専門学校卒で非正規社員の主人公が周囲の反対を押し切り、20代半ばで大学受験に再挑戦するお話。
学歴差別、非正規社員の雇い止めといった社会的なテーマも含まれているが、むしろ主人公は理解ある婚約者もいて、割と恵まれた立場にある。そんな中で「なぜ周囲の勧めるような幸せを受け入れないのか」がテーマとなる。実際、主人公は飽き性で誘惑に弱く、キラキラしたヒロインではないところがリアルだ。
経済的理由で東京の大学進学をあきらめさせた母も決して毒親とはいえず、平凡で愛すべき娘にとって一番の理解者かもしれない。しかし主人公が引っ掛かっているのは母の敷いたレールに乗っかり、自分の力で挑戦した経験がないことなのだった。「今のままでは自信のないままで人生を送り、何もかも母のせいにしてしまう」という気持ちに共感する若者は多いのではないか。決して親が嫌いなわけでも反抗がしたいわけではない。でも自分の人生を生きていない気がする、という感覚が現代的。
主人公の女友達も婚約者もいい人で、限度を超えてやらかしてしまった主人公を突き放しながらも見捨てない。なんだかんだ主人公は人に愛されて人生を送っていくだろうな、と思いながら見終えることができる。
2023年2月に映画館(シネマスコーレ)で鑑賞し、Amazonで見られるようになっていたので何となく再訪。もともと好きな映画ではありましたが、初めて見たときより泣けてしまいレビューの筆を取りました。
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