「セリーヌ・ディオンというよりむしろ…」ヴォイス・オブ・ラブ regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
セリーヌ・ディオンというよりむしろ…
まずは、セリーヌ・ディオンの半生を5歳から47歳まで自分でこなした、兼監督・脚本のヴァレリー・ルメルシエの力技に拍手。撮影用の備品を小さく作ったり遠近法を利用するなどの工夫を施した努力を買いたい。たださすがに撮影時50代半ばの彼女を少女に見せるには無理があったと言わざるを得ない。ハッキリ言うと中島みゆきに見えてしょうがなかった。
ストーリーは年の離れた音楽プロデューサーとの恋愛に重きを置いており、華々しく歌手として活躍する一方で、子宝に恵まれず悩む女性としての顔も描く。ただセリーヌ本人に配慮したのか、大きな障害やトラブルといった伝記ものに欠かせない要素が希薄。というかコミカル描写が随所にあるところからコメディとしても作っている節が感じられ、何ともどっちつかずな印象。
劇中で披露される曲がセリーヌの心情に合わせた選曲となっているなど、作劇のツボは抑えているものの、作品全体に漂うどっちつかずなムードから、せっかくのクライマックスの「オルディネール」を熱唱するシーンも浮いてしまった感。『タイタニック』の主題歌の扱いが雑すぎたのには笑ったけど。
ヴァレリー本人はインタビューで、日本を「第二の母国」と語っていたけど、それがリップサービスでなければ、次は中島みゆきの半生を自身主演で映画化し、是非とも「世情」を歌ってほしい。
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