「賛否分かれてるらしいけど、私は肯定派です」グッバイ、ドン・グリーズ! といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
賛否分かれてるらしいけど、私は肯定派です
他の映画の上映前に流れる予告編を何度も観ていて、「面白そうだな」と思ったので今回鑑賞しました。内容に関する事前知識はほぼありません。少年たちの一夏の思い出的なやつかなーくらいの印象。
結論ですが、結構楽しめました。思春期の男子らしい思い付きみたいな行動とか、友人同士でバカやったりする様子とか、自分の子供時代を思い出して笑って観ることができました。他のレビュアーさんも名前を挙げていますが、『スタンド・バイ・ミー』に似ていますよね。一夏の大冒険、仲間との友情、ちょっぴりの恋心と、永遠の別れ。劇中にスマホとかが登場するので舞台は完全に現代なんですけど、全体的にノスタルジーを感じる作品でしたね。
しかしながら、一部のレビュアーさんが批判的なレビューをしている内容に関しても同意できます。面白かったのは間違いないんですけど、若干のご都合主義とか唐突な展開とかが目についてしまう箇所がいくつかあり、「惜しいなぁ」と思う作品でした。でもそういう不満点を込みにしても私は本当に楽しめたし観て良かったと思います。オススメです。
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東京から少し離れた田舎町で、農家の息子であるロウマ(花江夏樹)はクラスで浮いた存在だった。数少ない友人であるトト(梶裕貴)と二人きりで「ドン・グリーズ」というチームを結成して遊んでいたが、医大を目指すトトが東京の進学校に進学し、ロウマは一人ぼっちになってしまう。そんな中、ロウマはある理由でアイスランドから日本にやってきていたドロップ(村瀬歩)と意気投合し、ドロップもドン・グリーズの一員となった。ある日、彼らの住む町で山火事が発生し、偶然同じ日に花火で遊んでいたドン・グリーズの三人が火事の原因だとする噂が立ってしまう。三人は自分たちの身の潔白を証明するために、花火の際に飛ばして行方不明になっていたドローンを探すことになる。
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私は声優オタクなので、どうしても声優の演技に注意が向いてしまいます。最近のアニメ映画は俳優さんや歌手の方などがメインキャラクターの声優を担当するパターンがほとんどだと思うんですけど、本作はメインキャラクターは全員実力派のプロ声優さんです。多分声優好きなら全員知っているであろうキャストをメインキャラクターに配し、登場する機会の少ない浦安チボリ役に超有名声優の花澤香菜さんをキャスティングする。ゲスト声優としてロウマの両親を演じるロンドンブーツ1号2号の田村淳さんと元HKTの指原莉乃さんはどちらも過去に声優の経験があるので全く演技に違和感ありませんし、登場機会もかなり少ないです。
ここ最近のオリジナルアニメ映画の中では間違いなく「声優の実力が一番高い」作品です。他の作品では「ここの演技気になるなぁ」というシーンがちらほらと散見されるんですけど、本作に関しては声優の演技はほぼパーフェクトだったと思います。
『スタンド・バイ・ミー』では死体を探す冒険でしたけど、本作『グッバイ、ドン・グリーズ』はドローンを探す冒険です。『スタンド・バイ・ミー』の「死体を見つけて人気者になろう」という主人公たちの行動原理は現代ではイマイチ理解できないですよね。そういう部分で『スタンド・バイ・ミー』は、間違いなく名作ではありますが、どうしても古さや国民性を感じてしまう作品です。
本作はドン・グリーズの三人が冒険に出掛けるための理由付けが現代っぽくて良かったと思います。「身の潔白を証明するためにドローンを探す」ですからね。「死体を捜す」よりは分かりやすくて納得感もあります。
少年たちが冒険の中で、各々の悩みや葛藤を吐露する描写も結構良かったですね。主人公たちの高校生という年齢設定も効果的に働いていました。思春期の不安定な精神と学業や人間関係で問題を抱えやすい年代であるが故に各々が抱えた暗い部分を冒険の最中に吐露し、ぶつかり合うことでより深い絆で結ばれるようになる。青春冒険映画の王道のようなストーリーで、私はとても楽しめました。
ただ、終盤の展開はかなり急すぎたように感じましたね。彼らの冒険はかなり時間を掛けてしっかり描かれていたのに、冒険のその後はかなり駆け足に展開しているように感じてしまいました。映画なので尺の都合などもあるんでしょうが、映画中盤までに張られた伏線が回収される大事なシーンなのでもう少し丁寧に描いてほしかったなぁというのが正直なところです。
「ご都合主義だ」と批判する方もいらっしゃるようですが、私は批判するほどのご都合主義には感じませんでした。確かにご都合主義っぽい展開なのは認めますが、創作なんですから、多少のご都合主義は無問題です。
観ておいて損は無い作品だったと思います。オススメです。