「【”明日、世界が終わっても後悔しないように生きる。””君は自分の宝物を知っているか。”屈託を抱える高校生トリオが、徐々に成長する様を幻想的な自然美と破綻なき物語構成で魅せる作品。】」グッバイ、ドン・グリーズ! NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”明日、世界が終わっても後悔しないように生きる。””君は自分の宝物を知っているか。”屈託を抱える高校生トリオが、徐々に成長する様を幻想的な自然美と破綻なき物語構成で魅せる作品。】
ー 前半に散りばめられた様々なピースが、後半、見事に嵌って行く様が素晴しき作品。
それは、コーラのプラスティック瓶であったり、
ドロップが住んでいたアイスランドの大瀑布の話であったり、
その傍に立つという赤い電話ボックスであったり・・。
序盤の小さな世界が、後半、どんどんスケールアップしていく様もとても良い。-
◆感想
・田舎の山村で屈託した思いを抱えながら生きていたロウマとトトは”ドン・グリーズ”を結成。
そして彼らが高校生になり、迎えた初めての夏休み。
東京の高校に入学していたトトが帰省し、アイスランドから来たドロップと言う15歳の少年も”ドン・グリーズ”に加わる。
- ロウマは中学時代と同じように、未来を諦めたかのような屈託した心を持ちながら
トトも最初は都会の進学校に進学した事を頬らしげに語るが、3人で旅をする中で、漏らした本音。
ドロップのみが、明るく振舞っているが、彼も哀しき定めを背負っている事が徐々に露わになっていく過程の描き方が良い。-
・花火をしていた3人は、いつの間にか山火事の犯人とされ、潔白を証明するために彼らが打上花火を撮影するために飛ばしていたドローンを探しに行くところから、今作はロードムービーの要素を帯びてくる進行も良い。
- ”夏休み””少年の成長”と言えば、ロードムービーでしょう。-
・その過程の中で、ドロップが語るアイスランドの大瀑布や、その傍の赤い電話ボックス。その光景が幻想的に劇中描かれる。観ている側は、ドロップの幻想だと思いながらその光景を見るのである。
又、ロウマは中学時に恋していたチボリへの想いを脳裏に浮かべ、トトも上記に記した通り、都会の進学校について行けない辛さ、医師になるという夢への疑問を口にする。
- 厳しき旅を共にすると、時折、互いの本音や屈託が自然に口に出る事を、私は長期登山をする中で何度も経験しているので、彼らの姿が心に沁みる。-
・そして、”ある哀しき出来事の後”ドロップが遺した、コーラのプラスティック瓶に書かれていた地図。
- ロウマがそれに気づき、トトと共にアイスランドへ飛ぶ姿。
以前の彼らであれば、あのような行動は取れなかったであろう。-
<ラストシーンは、幻想的なまでに美しい。
アイスランドの大瀑布や、その傍の赤い電話ボックスは実在し、鳴りだす電話。
ロウマが受話器を取るが、電話は切れる。
だが、電話ボックスに貼られていたコーラのラベルの裏に書かれていた言葉。
”15才、最後の雄姿を見届ける友だち”
・・このシーンは、沁みたなあ・・。
ー 小さな世界に留まらず、世界を見下ろしてみよう。
トンネルの向こうに行ってみよう。
”大きなまわり道”をしても良いではないか。
きっと、今まで見えなかったものが見えて来るだろうし、世界が一つに繋がっている事が分かるだろう。ー