「言うほど悪くないかな」嘘喰い おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
言うほど悪くないかな
原作未読ですが、予告を観てそれなりに楽しみにしていた本作。それなのに、公開初日のレビュー評価は大荒れでまさかの1点台!そんな酷評にはあえて目を通さず、覚悟の上で鑑賞してきました。だって3日前にもうチケットを買ってしまっていたから!で、鑑賞後の率直な感想としては、思ったほど悪くなく、そこそこ楽しめたかなという印象です。まあ、ハードルを限界まで下げまくって鑑賞したおかげかもしれませんが…。
ストーリーは、ギャンブルの裏組織「賭郎」のお屋形様に挑んで負けた、「嘘喰い」と呼ばれるギャンブラーの斑目貘が、たまたま出会った青年・梶隆臣とバディを組んで、組織へのリベンジに挑むというもの。冒頭から聞き慣れない苗字の人物がぼんぼん登場し、頭の整理が追いつきませんでしたが、実際にメインストーリーに深く関わる人物は少ないので、混乱することはなかったです。展開も伏線回収もシンプルでわかりやすすぎたくらいです。むしろギャンブルものなら、ラストにあっと驚くどんでん返しを用意してほしかったです。
主演は横浜流星くんで、いつもの彼らしい演技で斑目貘を演じています。ただ、本作の斑目はギャンブルシーン以外の人物背景までは描かれておらず、人物像をつかみかねるので、彼の演技も可もなく不可もなくといった印象です。バディとなる梶は佐野勇斗くんが演じ、こちらは役柄にうまくはまっていたように感じます。佐田国役の三浦翔平さんは、熱の入った演技で敵役として存在感を発揮していたと思います。
ただ、やはり気になることもそれなりにありました。中でも最も残念なのは、ギャンブルがテーマの作品なのに、ヒリヒリするような緊張感がまるで伝わってこないことです。これは致命的と言ってもいいです。観たかったのは、相手の裏の裏を読むような心理戦や絶体絶命の窮地からの大逆転みたいなシーンであって、しょぼいソルジャーとのサバゲーごっこじゃありません。
それでも前半はテンボよく展開してくれたおかげでそれなりに楽しく観ていたのですが、クライマックスのババ抜きは正直ダレて眠くなりました。絵面も演出も地味だし、心理戦の緊迫感も、首吊りの恐怖も感じられず、ただただ間延びした印象でした。そこからさらに一年後のシーンにいたっては、もう完全に蛇足です。あんな半端な終わり方で締めるなんて、あわよくば次回作につなげようとするスケベ心が透けてシラケました。
最後にもう一つ不満をあげるなら、ヒロインポジションの鞍馬蘭子を演じた白石麻衣さん。決定的に役に合ってない上に、申し訳ないですが演技が棒で、彼女のシーンだけ作品から浮いているように感じました。本当にきれいだし、好きな女優さんだけに、見ていてつらかったです。
こんな感じでいろいろ気になり、これが酷評につながっていたのかもしれません。あとで他の方のレビューも読んでみたいと思います。
今回は舞台挨拶ライブビューイング付き上映で、主演俳優陣や監督の声を聞けたり、仲のよさそうな雰囲気を感じられたりしたのはよかったです。上映後のトークということで、裏話も聞けました。「嘘喰い」の斑目が、トランプのダウトで梶や鞍馬に負けるシーンも撮影したのに、編集でカットになったそうです。DVDには収録されるかもしれないそうなので、機会があれば観てみたいです。