「壮絶なライブハウス火災に端を発した連続死亡事故の背後にある闇に迫る二人の男の奮闘を描いた良質なスリラーのようなドキュメンタリー」コレクティブ 国家の嘘 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
壮絶なライブハウス火災に端を発した連続死亡事故の背後にある闇に迫る二人の男の奮闘を描いた良質なスリラーのようなドキュメンタリー
2015年10月、ブカレストにあるライブハウス“コレクティブ”でバンド演奏中に火災が発生、死者27名、負傷者180名を出す大惨事となったが、命が助かったはずの負傷者が搬送先の複数の病院で次々に死亡、死者数が64名に達してしまった。その不可解な事件の調査に乗り出したのはスポーツ紙“ガゼタ・スポルトゥリロル“の編集長カタリンとそのスタッフ。彼らは事件の背後にある製薬会社や病院、政府関係者達が絡んだ闇を次から次へと暴いていく。一方ルーマニアの政治も混乱を極め、次々と保健大臣が辞任に追い込まれる中で金融のスペシャリストであり慈善家でもあるヴラドが就任、腐敗まみれの社会福祉行政にメスを入れようとするが・・・。
まず圧巻なのはライブ演奏に火災が発生し観客が逃げ惑う様を鮮明に映した映像。いかに“コレクティブ”で起こった事故が凄惨であったかがすぐに解るわけですが、その後に次々と暴かれていくとても現実のものとは思えない社会福祉行政にまつわる闇の深さに身の毛がよだちます。主人公はカタリンとヴラドですが、彼らの奮闘の合間に差し込まれるのが火災から生還したものの全身に夥しい火傷を負い指の切断も余儀なくされた女性テディ。建築家である彼女が自ら被写体となることで変わり果てた自分と向き合いながら他の人たちにも生きる希望を与えようとする様が挿入されることで、こんな悲劇を二度と起こしてはならないという強烈なメッセージが響いてきます。終幕後に漂うずっしり重い虚無感は格別で、しばらく席から立ち上がれませんでした。
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