「ジャーナリストが権力に屈服すれば」コレクティブ 国家の嘘 tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャーナリストが権力に屈服すれば
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国家は国民を虐げる。
ラスト、国民の選択によって腐敗した権力が再び力を取り戻し、改革派やジャーナリストが敗北していく様が恐ろしかったです。
メッセージだけでなく、映画の作りとしても、ナレーションやインタビューを排し、2人の主人公の主観視点で進む、没入感のある構成なので、何にも前情報を入れずに観れば劇映画かと勘違いしてもおかしくないです。
本作が映し出してしまった出来事は、我々日本人にとって他人事ではないように思います。
ルーマニアでは、一つの党が長期的に政権を担った結果、利権が集中し、全うな報道機関は会見場に潜り込むために政権に追従するようになり、国民は政治への関心を失い投票率は低下し、汚職や腐敗が横行するようになった、と。
これ、「ルーマニア」を「日本」に置き換えても成立するんですよね。
このドキュメンタリーは、権力腐敗のツケを国民が払わされたという嘘みたいな、悲惨な事実を観せてくれます。
しかも、その事実を暴くのは御用メディアではなくタブロイド紙の記者達。
取材により、真実に近づくにつれ事の重大さ、取り返しのつかなさを痛感し、彼らの顔が曇っていくのが印象的でした。
保健相も改革を進めようにも、既得権益を貪る権力者が作り出した、とてつもない壁に阻まれ、最終的には国民の選択により敗北を喫していきます。
私は救いのないラストに、どすんと重たいものを感じましたし、自分事として身につまされました。
現代人の教科書として、今観るべき作品だと感じました。
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