アリスとテレスのまぼろし工場のレビュー・感想・評価
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人が生きるとは!という事を教えてくれる映画👑
観た感想は、めちゃくちゃ感動して泣けました。超、おすすめ映画です。
冒頭の部分は、男子校生の4人組が、あたりさわりの無い会話をしてる日常なんですが。。。
とんでもないです!!!まさか。。。最後には、こんな展開が待ってるなんて!!!人が生きると言う事はこういう事なんです!!!と言う指針を示してくれる映画でした。皆さん愛する人、居ると思いますが、その愛する人が明日には、交通事故やら不慮の事故で亡くなられる事だって有り得る昨今!この世の中が、破滅したって!!愛する人と愛しあって強く生きる!!!主人公を観てると、めちゃくちゃ共鳴しました。
せつなくて胸が痛くなるほど感涙しました。
是非、たくさんの人に観てもらいたいです。
※長文です 評価としては素晴らしい映画の一言につきるのでネタバレ考察
私は監督の前作にして初監督作品からのファンで、前作についても何度も視聴した身である為、岡田麿里監督の作品に共通するテーマはズバリ「変化」だと考えている。
前作は不老の種族イオルフの少女と人間の赤子の出会いをきっかけに、イオルフの不変への安心感、人間の不変への憧れに対する、変わってしまうことへの苦しみ、その後に訪れる幸福を描くもの。
それに対して今回は変わることが出来なくなってしまった見伏の人々の苦しみ、変化への憧れに対して、咲希というただ一人の異物である少女との出会いをきっかけに、変化によって齎される不幸、終わりを描きながら、最後にはそれでも変化することでしか得られない未来を描いている。
どちらにしても同じことだが、変化するということは必ずしも良いことばかりではない。
しかし、変化の先にしかないものも必ずある。
それが二つの作品を通して、私が受け取った岡田麿里監督が伝えたかったテーマだと思っている。
それを踏まえての細かい考察。
■見伏という街とそこに生きる人々について
製鉄所の事故の際に作り出された世界、という認識は作中人物含め視聴者の多くが共感しているはず。
では、実際にどういう世界であるのか。
作中では神の与えた罰によって生み出された世界であると言われ続けるが、それを否定するかのように次々と真相が明らかになっていく。
この世界の外には現実があり、さらにそこにはこの世界で過ごした時間と同じだけの時間を経て変化した本当の人々が暮らしていること。
つまり、この世界の見伏の人々は偽物であり、罰を与えられて閉じ込められたという話に矛盾する。
ではこの世界と人々は何なのか。
これは作中にて登場人物の一人の言葉が鍵になるのだが、見伏の事を愛している神が製鉄所の事故で命を落とした人々、主要産業が衰退して死にゆく街を哀れに思い、生存者を含め街の今をコピーして作り出した幻という答えになるのではないだろうか。
創作としてのメタ視点で話せば、あのタイミングで颯爽と登場して主人公たちを助け、意味深に語ったお祖父ちゃんの考えが、ただの妄想であるわけがなくズバリ制作者の解答であるとする方が理に適う。
その為、この世界と現実の世界には例外を除き繋がりはなく、この世界で消えた人々がどうなったのかは、作中で描写がない現実での生死によるところなので視聴者が推察することは難しい。
製鉄所の事故だけに限れば、関係者は死に、他は生きているだろうが、その後生き続けているかは定かではない。
■では何故人々が消えてしまうのか
神機狼が現実との境界に入った罅を修復する存在であることは間違いないだろう。
しかし、人々に入った罅は一体何なのか、それによって罅が修復されるのではなく世界から消えてしまった理由は何なのか、作中で言われていたように変化によるものなのか。
まず、これが変化によるものという回答は作中から否定出来る。
正宗に至ってはズバリ指摘されているが、他の登場人物に関しても彼らは作中で成長し、変化している。
しかし、彼らに罅は入らず、消えてもいない。
では何故かといえば、これもまた見伏の神の優しさなのだろうと私は考えている。
例えば、作中初めて消えることになった友人の少女の心中を察すれば、彼女はともかくあの場から消えてしまいたい程の羞恥を覚えていたはずだ。
そして、その場をただ逃げ出したからといって、逃げ場のない世界で明日から変わらない生活を彼女は送れたはずもない。
次にDJを夢見ていた友人の少年。
彼は明確な夢を持っていた。
しかし、この世界が現実でないと知ってしまったことで、夢を叶えることは不可能だと思ってしまった。
その上、この世界がいずれ消えると知らされていたのなら、心が折れてしまっても不思議ではない。
そして、主人公の父親。
彼はこの世界の真実を知っていた。
幻であることも、自分が死者であることも。
だからこの世界が存続するようにと咲希を現実に戻そうとし、それを否定された後も世界の存続に努めたが、彼は息子である正宗を見て、この世界の人間であっても変わっていけることを知った。
そして、自分はそれが出来ないと知った時、身体だけでなく、心も死んでしまった。
このように考えると、変わってしまうことでなく、この世界で生きていけなくなることがトリガーになっているように思え、これも神の優しさと考えることが一番しっくり来ると思う。
■咲希とこの世界の今後について
基本的には繋がりのないこの世界と現実において例外的な繋がりを持つ少女、咲希。
繋がりと言っても、本質的には現実の少女である咲希はこの世界にとって単なる異物である。
ただただ何の因果かこの世界に迷い込み、異物であることから罅を生み出していただけで、咲希個人がこの世界に対して影響を与える因果を持っているわけではない。
現実の主人公、ヒロインの娘であるということから登場人物に対する因果があるということで彼らが行動を起こし、彼らの変化とその自覚を促す役割だったことは間違いないが、この世界の存続という意味では主人公の父親が提案していた時点で咲希を現実に帰していれば現時点で問題にはならなかっただろう。
実際には年々この世界も限界を迎えていたようなので、今回の騒ぎで消えてしまった人々は可哀想ではあるが、今回の騒ぎをきっかけにこの世界でも変化し、成長出来ることが分かったこと、そしてそれを知った色ボケ叔父により製鉄所を稼働させることでこの世界を存続することが分かったことは意義のあることである。
そして、咲希がこの世界への因果を持たない以上、この世界は咲希が現実に戻った後も当然存続していくことだろう。
今までとは違い、変化し、成長していきながら。
■最後に
纏めになるが、最後にこの世界は結局何なのだろうと考えると死者の世界とするのが妥当ではないだろうか。
まず肉体が成長しないという点。
特に印象的なことは妊娠中の子どもが生まれないという描写で、この世界が精神的には変化し、成長していける世界であると優しい神様が作り出す世界としてはどうにもしっくり来ない。
その点でいえば死者の世界であるから新しい生命が生まれないと考えるとしっかり来る。
世界的に死者の国は神話などでよく描かれ、日本神話にも黄泉の国として描かれている。
また、現実の生死に関わらず、同じようにコピーとして作り出された街の人々だが、生者と死者のどちらにとってこの世界が重要かといえば死者だ。
勿論、現実の自分とは別人格であるのだからどちらにとっても大切ではあるが、死者には現実の未来がない。
そしてタイトルについて。
まずアリスは分かりやすい。
不思議の国のアリスであり、咲希の事。
そしてテレスに関しては私の中で該当するものがないので、単にアリストテレスの言い換えだと思う。この映画でいえば登場人物たちが生きている主観の世界を現実、その上位世界とも言える現実をイデア界とし、イデア界こそ真の存在であるプラトンに対し、自分たちが生きている現実こそが真実であると捉えたのがアリストテレスである為、この映画に相応しいタイトルではないかと思う。
長くなったが、私の中ではここに書かなかった細かい描写含めこの考察で概ね納得できているので、この後2回目の視聴をして答え合わせをしたいと思う。
勿論、本当の解答は岡田麿里監督の中にしかないので、いずれ知る機会があれば嬉しい。
色々?な事が多すぎました。絵は最高に美しい
さすがMAPPAと言わずにはおれません、なんと素晴らしい背景の描写✨そしてキャラクターも少し古い感じがしますが、それが返ってこの映画にとってもあっていると思いました。
物語は大筋は理解できたけれど、細かいところで?な事が多くて…
あの世界の人たちは幻になってしまったという事ですが、それならなぜイツミが生まれるのか?あの事故が起きなかったパラレルワールドなのか?イツミが生まれるんだからムツミと政宗も生きて大きくなるんですよね?途中でひび割れに吸い込まれてしまったムツミのことが好きなパッとしない女の子は死んでしまったのか?それとも現実世界に戻ったのか?政宗のお父さんが亡くなって、叔父さんが云々の件も必要なのか?後になって考えれば考えるほど謎のことが多くなっていく映画でした。
変化を望まぬ人達の暮らす工場の街。中学生の男女と一人の少女との出会いが、この街と人の運命を変えていきます。鑑賞後の余韻が凄く、好き嫌いが分かれそうな作品です。
岡田麿里さんの脚本作品は、劇場用アニメを中心に
何本か観てきました。秩父三部作など。
一番最近観た「空の青さを…」は良かった。・_・ハイ
この作品も気になっていたのですが、ようやく鑑賞
することができました。
さあ鑑賞
ふんふん
エンドロール…
…
終了… えっ??
う~ん
観た感想を一言で …と聞かれたとして、正直
返事に困る作品を観てしまった感じです。・_・;
あのエンディングをどう受け止めるかで
評価も180°違ってくる作品のように思えます。・_・;
「理解し難い不親切なエンディング」
「色々な想像をさせるエンディング」
天の邪鬼な私は、その両方を感じ取りました。
鑑賞直後は「えっ?」 でしたが、
日が経つうちに「あれはこういう事に違いない」と
考えることを楽しんでいたりします。
※これを書いているのは鑑賞後4日目。
まだ自分の脳内では完結していません。うー。
◇
工場のある地方の街でのお話。
一見普通の街に見えるが、実は普通ではない。
時折、空にひび割れが出来るのだ。
そのひびを、工場から立ち上る白煙が修復する。
煙は白い竜の姿となり、ひび割れた空を直していく。
やがてヒビは消え、人も日常の暮らしに戻る。
主人公は、そんな街の中学2年生。
仲間と共に「普通に」暮らしている。
だが、ここでの普通はやはり普通ではない。
・人は自分が変わらないように務め
・中学生も車の運転ができる
・「自分ノート」に自分を記録しては、自分が
昨日と変わっていないことを確認する
ひとつの街全体が、とても危ういバランスの上に
成り立っているようなのだ。
誰かが「変わりたい」と考えると、世界が揺らぐ。
「消えてしまいたい」と口にした人はひびの中に消える。
◇
この作品の登場人物の数は、多い。
その中でもお話の重要な人物と言えるのがこの3人。
・菊入正宗(中2)
・佐上睦実(中2)そして
・少女(最初は3~4才くらい?)
工場の中、敷かれた線路の中に入り込む正宗。
目の前に小さな女の子が現れる。
話しかけるのだが、通じているのかいないのか…。
そこに現れる佐上睦美。
この女の子の世話をしているらしい。
そして正宗にも、世話を手伝えという。
訳が分からないまま、その後も工場に足を運ぶ正宗。
睦美との仲も、少女との関係もゆっくり進展する。
いつの間にか、少女は大きくなっている。
彼女だけがひとり成長しているのだ。
自分の気持ちを言葉にするようになった少女に
正宗は思いついて名前をつける。
「いつみ」
睦美よりも罪が一つ少ないから「いつみ」。
少女もその名を気に入った様子なのだが
その場に戻ってきた睦美が、名前をつけた正宗を
非難する。
” 私たちはこの子に深く関わってはいけない ”
この少女は、街の外から迷い込んできた。だから…
そういう睦美は、他にも何か大事な事をを知っている
らしいのだが…。
◇
最終的に、正宗と睦美は決断し行動します。
少女を元の世界に戻そう と。それがきっかけで
この街が消滅してしまうのだとしても…。
一方で、この世界が少しでも長く続くように と
少女を元の世界に帰すまいと動く人びとも。。
さあどうなる、この街。そして正宗たち。
とまあ
おおむねこんな感じでお話は進みます。
登場人物の多さと、それぞれの思惑とが複雑に
絡み、理解に頭を使う作品でした。
この街での、正宗たちの生活は生き生きと描かれて
いたと思います。
ラスト近くまでの展開にもリズム感があって良い感じ
を持って観てました。
なので、基本的には観て良かった。
満足です。
ただし、やはりあのエンディング。
考え甲斐があるというか何といいますか
単純に一目瞭然な終わり方ではありません。-_-;
観た人の好み等で評価が分かれそうな作品です。
興味が出た方は、その目でエンディングを
確かめてみて下さい。
決して「つまらない」作品だったとは
思っておりません。はい。・_・
で
◇鑑賞後6日目(わーい)
主題曲の「心音」(by 中島みゆき)。
上映終了後に、年配のご婦人方数名が ” 未来へ~♪” と
口ずさみながら退席していたな と思い出しました。
確かに覚えやすいフレーズです。
歌詞の他の部分はどんな内容なのだろうかと気になり、
Spotifyで聴きました。(歌詞も表示できます♪)
この作品のために書き起こしたのか? と思えるような
内容の歌詞でした。(事実がどうかは確認していません)
何回か繰り返し聴いている内に、こう思えてきました。
# 現実の世界から、まぼろしの街に少女が迷い込む
# 迷い込んだ先は、少女の父と母の育った街。
# その街は、工場の火災事故で大勢の命が失われた。
# その現実を受け入れることの出来ない人達が、
# 閉じた時間の中で毎日を繰り返している。
# それほど親しくなかった中学生の父と母。
# 迷い込んだ少女を現実の世界に送り返そうとする。
# 上手くいけば,少女は未来の現実に戻る。
# その事で、まぼろしの街が消えるとしても…。
こう考えた上での、あのエンディング。
少女は未来の現実世界に戻ったのでしょうか。
◇最後に
タイトルの意味が、未だに理解できません。+_+
まぼろし工場の街。
「アリスとテレス」は「アリストテレス」から。
アリストテレスは古代ギリシャの人。プラトンの弟子。
哲学を始め、様々な学問の始祖のような学者らしいです。
この作品の内容に関わるようなことを、アリストテレスは何か
述べていたりするのでしょうか…。(…不勉強)
公式サイトや他の方のレビューで何か分かるかなぁ。
ということを期待しつつ、レビューを見に行ってきます。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
・_・
・_・
・_・
・_・
・_・
・_・
・∀・
◇以下、おまけ(あれこれと考えてみた推察 @_@;)
以下は削除した上でUPしようと思ったのですが
この作品ほどあれこれ考えた作品も珍しいので
思考過程を書き残して置こうと思って追記します ・_・;
■町の外は「現実」なのか「死後の世界」なのか
この街では、「いつみ」だけが成長を続けていた。
いつみだけが「外からやってきた」からなのか。
ならば「外の世界」とは「生きている者の世界」で
「工場の街」とは「生きてはいない者の世界」なのか
「生きていない者の世界」は、その存在がとても脆く
そこから「消えたい」と願えば「消えて」しまう。
「消える」とは
存在の消滅なのか、現実世界への送還なのか。
前者なら「死」。
後者なら「蘇生」または「神隠しからの帰還」。
そう考えたなら、この「まぼろし工場」の位置づけは
「三途の川」のようなものなのだろうか。?_?
正臣と睦実は「いつみだけ」を外の世界にいける列車に乗せた。
「生きている者」は現実の世界に戻さなければと考えた。
その結果は…
■工場跡の廃墟を尋ねてきた少女は「いつみ」なのか
人の生活の痕跡など、何もない廃墟。
そこをタクシーで尋ねてくる少女が一人。
携帯電話で、「母親」と会話をしている。
この「少女」は「いつみ」なのだろうか。
電話の相手は「睦実」なのかそれとも…。
ああああ また思考のループ。
変われない変わってゆく
このての「もじり」タイトルはあまり期待できないなあって個人的に思ってるのと
前作「さよならの朝に約束の花をかざろう」のまとめきれなかった感じが引っかかってたので
今回見るかどうか悩ましかったのだけど、
妙に評判がいいので足を運ぶことに
あ、かなりちゃんと映画してる
視聴者の予想をいい意味で裏切り
ひねりを加えて…と思わせといて確実に物語を着地させに来てる
これはかなり安心して見られる青春ファンタジーだ
永遠の思春期のなかに、重大特有の色恋の生々しさへの
拒否感と嫌悪感と欲が渦巻く感情がきっちりと描かれていて
予告からの印象よりもすっきりと、面白く見終わることができた
抜け出せない、変わることができない状況の中でも
ちゃんと変わりつつある関係
終わらない青春期とその結末まで一気に観れる作品だ
アニメらしくないアニメ
SFアニメと言って良い?
アニメは映画館では見ないようにしているが、題名プラス時間帯で観賞
けっこう深い内容
死んでも(死んでいるとは後半にわかる)時の止まったエリアで生活する人々と、そのエリアに迷い混んだ一人の女子(言葉も喋れないが止まったエリアで成長した…)が巻き起こす摩訶不思議な話
現実味には欠けるものの、作者の言いたいであろうことが色々ちりばめられ、中々頭を使わないと…
世界で認められている意味が理解できました‼️
題名からして難解だけど、中島みゆきの歌は最高!
「君たちはどう生きるか」も難解なアニメ映画でしたが、本作も難解でした。そもそも題名が謎で、「まぼろし工場」は分かったけど、「アリスとテレス」というのが最後まで分かりませんでした。てっきり「アリス」と「テレス」という登場人物が出て来るんだと思ったんですが、全然出て来ない。古代ギリシャ哲学者のアリストテレスと関係はあるんだろうと思いつつ観ていたものの、正直それも明示的な手掛かりは発見出来ないまま終了。
仕方なく各種解説に答えを見つけようとしたところ、どうやら劇中出て来る「エネルゲイア」という言葉がアリストテレスの言葉らしいということが分かりました。でも辞書で調べると、
「エネルゲイア【(ギリシャ)energeia】アリストテレス哲学で、生成の過程の終局として実現する姿。現実性。可能態に対する現実態。(引用 デジタル大辞泉)」
何のこっちゃ(笑)
これじゃあなおさら分からないので、さらにググってみると、「エネルゲイア(活動)」と「キーネーシス(運動)」という2つの概念が紹介されているものを発見。「キーネーシス」というのは一般的な運動で、始点と終点があり、終点に到達するのが目的なものであるのに対して、「エネルゲイア」というのは現在進行形の過程が目的となっているものであるという解説でした。これでも何のこっちゃに替わりはありませんが、本作のストーリーと照らし合わせると、何となく言わんとしていることは分かったような気がしてきました。
本作の舞台となる1990年頃の見伏という街は、基幹産業である製鉄工場が爆発した影響で外界と遮断され、時間も止まって同じ1日を繰り返す無限ループに嵌ってしまいます。中学3年生の主人公たちは、いつまで経っても中3のまま。そんな見伏の状態は、まさに「エネルゲイア」。現在進行形の過程はあるが、終点はない。いや、終点はあるにはあって、ご神体と化した製鉄工場から発する「神機狼」に襲われると、消えてなくなってしまうという終点はあります。なんという悲劇的終点!
で、一応題名問題がなんとなく解決したところで、一体本作は何を言いたかったんだろうと考えましたが、私としてはバブル経済終盤の1990年頃が舞台になっていることがキーではないかと解釈しました。当時の日本は経済力もあり、日本中に活気が満ちていた時代でした。しかしながらバブル崩壊とともに経済成長にブレーキがかかり、米ソ冷戦の終結という国際環境の大きな変化もある中、日本は「失われた30年」に突入します。
主人公たちは中学3年生で時が止まり、高校進学も大学進学も就職もせぬまま同じ日を過ごしている訳ですが、そんな「エネルゲイア」な状態が、幸せなのか不幸なのか?一方で劇中では、爆発により製鉄工場が閉鎖され、普通に時が進む別世界も登場。基幹産業を失い、恐らくは斜陽を迎えているはずの見伏と、30年前のままの見伏。いずれも地獄のような気もしますが、主人公の正宗と睦実は斜陽する未来に期待を掛けて物語が終わったところを観ると、岡田監督としては過去の栄光に囚われず、現実を受け入れて未来を築くべきだと言っているのかなと思ったりもしたところでした。
いずれにしてもいまだに答えは見つかりませんが、本作のために作られた中島みゆきの「心音」がホントに名曲であることだけは間違いありません。という訳で評価は★4とします。
優しいまなざしから描かれる優しくない物語
何これ・・・こんなのズルいよ・・・泣くしかないじゃん・・・っ!!
なアニメ、通称『あの花』でおなじみの岡田麿里さんの最新作。監督としては2作目
舞台は製鉄業に主軸を置く田舎町、見伏町
冒頭すぐに主人公 正宗と友達は製鉄所の爆発を目撃する
火を吹く工場。ひび割れる空。荒ぶる龍の形をした蒸気
何が起こっているのか? 急に異世界ファンタジーに巻き込まれていくのか?
そんな「???」を観客に投げつけるようにして映画は始まる
シーンが変わると一転、主人公達の学校生活が描かれる
冬の見伏町で暮らす正宗達。誰かが誰かに恋をしたり、将来の夢を話したり
普通の日常のように見えるが我々にはどこか違和感がある
そして正宗が同級生の睦実に製鉄所に連れていかれることによって物語は大きく動き出す
工場の一区画では、さながら狼少女ジェーンのように一人の少女が飼われていた―――
抽象的でなくまっすぐな青春映画なのに、様々な隠喩とも思える巧みな設定と展開
監督の優しいまなざしから描かれる優しくない物語
悩める若者アニメとして永く残る一本になることだろう
変化することが正しいという結末でなかったことがこの作品の優しさであ...
変化することが正しいという結末でなかったことがこの作品の優しさであると感じる。
登場人物の生々しさはやはり岡田節が効いていた。つい恥ずかしさに目を背けたくなるものもあるが、そこがまたリアル。中学生ならではの行動(原ちゃんの車のシーン)がまさにそれだ。見ているこっちが恥ずかしくなるところがたまらない。あと園部さんたまりません。セツナレンサ。
成長、変化、進化、を止めた町が舞台なわけだが、登場人物からも見てとれる。特にイツミの幼児のような振る舞いが印象的。人間は学ばなければ人間ではないかのような演出。少しやりすぎな気もするが、あの背格好であの口調だからこそ可愛さもあり不気味さもある。どこへも行けない運転免許の件も好き。
まぼろしの世界が消えるかと思ったが、あえて残したことに優しさが詰まっている。
前に進むためには、自分1人で進むしかない(ムツミ)厳しさを電車の描写で表していた。変化を望むということは現状からの脱却を意味する。未来を掴むためには1人で立ち向かって行かなければならない現実を叩きつける。
しかし、あのまぼろしの世界が消えなかったことで、前に進むことが正しいとは限らないと優しく諭してくれている。止まることもいいんだよと肯定してくれている。最後にムツミが故郷に立ち戻ることでも、たまには戻ってきてもいいと許しをくれる。しかし、まぼろしはまぼろし。いつかは忘れられて消えていく。見ている側が投げかられる大きな問い。
進むための厳しさと、止まることへの許しを与えてくれるそんな作品だ。
個人的には「俺はいいオカンのままでいさせる気はないね」というセリフが一番人間ぽくて好きだった。
『アリスとテレス』 タイトル私感。
そりゃアリストテレスと語呂の良さだと思うけどさ。
アリスさんもテレスさんも出てきませんでしたよ。
それでも観終わったあとの少しだけタイトル私感。
『アリス』異形の地に堕ちてくる幼女が出てくるなら、それは『Alice's Adventures in Wonderland』の主人公の名。彼女はちゃんと最後に元の世界に戻る事ができるのか。
さて、『テレス』。中々難しい。笑
色々考えた末の感想。
この異形な永遠の世界。時の流れない世界。
『Time less』略してテレスか。
観た時に感じた事を、あれやこれやと考えて帰路に着くのも映画の楽しみ。家に着くまでが映画です。
主人公は時宗だけど、睦美や母など女性の意思の強さ、行動力に惹かれました。
背景の美しさ、壮大さ。
ノスタルジーさ満載の世界観。
表と裏の世界を繋ぐ感動的なストーリー。
全てのキャラクターの魅力的な心情と台詞。
とても楽しく観させて貰いました。
皆さんも是非劇場でご覧ください。
死ぬ間際に、もっと生きたいと願うのが人間なのかもしれない。
エンタメも、涙活も、喜怒哀楽の棚卸しも堪能できます。
神職のおじさん、キャラ濃すぎて失笑しかなかったです…でも、重々しいキャラもハマらないし、キャラ設定が一番難しいところかも。
神様よりAIを信じる人が増える現代、大変だねと少々同情しました。
正宗くんたちの状況から、今の中学生って、こんなに恋愛脳なの?と疑問符だらけになってしまいました。
記憶を積み重ねているから、精神レベルが大学生ならアリなのかな。
人生で恋愛が一番になったことがないもので、少々羨ましかったです。
正宗くんと睦実ちゃんが五実を現実の世界に帰そうとするところは、ジーンとしました。
何があっても、親は子どもに自分より長く生きて欲しいと思うものです。
ここで涙腺崩壊でした…。
エンディングの中島みゆきさんの「心音」、響きました。
彼女の「未来へ~」と歌いあげる力強い声は、心に残ります。
明日も、1日頑張って生きます♪
蛇足ですが、アリスもテレスも出てきません。
アリストテレス?と思い至りましたが、帰宅後考察記事を読んで腑に落ちました。
題名のつけ方も含めて、新しいアート作品を見せられたような、視界が開けた気分になる作品です。
岡田麿里の暫定最高傑作
今までの岡田映画の切なさ、儚さを踏襲しながらこれでもかとエモさを詰め込んだ今作。
この感想は文字では伝わらない。
絶対に見た方がいい。
エモいとしか言い表せない映画。
序盤、世界観を掴むのに若干時間を要すが、中盤からは息もつけない。
文句なしの星5。いや星500。
この時代に殻を破ることの大切さを教えてくれる
突如として実世界から切り離された空想の世界
ここでは生きている感覚がないまま、実世界へ戻りたいという感情を押し殺し、変化のない生活を強いられていた。
このままの生活を続けるか、実世界へと戻るのか。さまざまな人間の思惑が交錯する中で、1人の少女の存在がキーとなる。
コロナの閉塞感が蔓延る今の時代だからこそ、殻を破って外の世界へと足を踏み入れる感覚が新鮮なものであった。作中の「一番よかった時代」に留まり続けるのか、それとも冒険をするのか。考えさせられる作品だった。
アイデアが良かった
途中、この設定からどう話を進めるのだろう、と思ったが、終盤は感動あり映画的な見せ場もありで面白かった。
思春期的な描写はそこまでハマらなかったが、基本的なストーリーが良くて、奇想を真面目に描いている。特に結末については考えさせられる。
映像表現も美しかった。
隠れた名作!
題名だけだと児童文学みたいな印象を受けるけど凄い心を揺さぶられた。「あの花」の岡田さんが脚本を勤めるだけあって見事に纏まった青春ファンタジー作品に仕上がってた。現実と幻の世界の間で葛藤する人達に共通する想いは世代は違ってもみんな一緒という所がとても良かった!世間ではあまり知られていないのが勿体無い隠れた名作だと思う。
現実と幻、何が正しくてどれが正しくないのか。
地域丸ごとの神隠し。みたいな感じ?
思った以上にしっかりラブコメってた。
段々と不可解な現状がわかっていく様は面白い。いつみの成長やみんなの気持ちの変化、、、色々な気持ちが混ざっていく、、、
とりあえず、まさむねとむつみはかなりいいね!思春期って感じを残しつつ進んでいく様、、、キュンキュンだね!
いつみとの関係性も良きでした!
あんな状況になったらどうするのか。様々な人の感情を上手く表現出来てると思う。あの状況だからこそ出来ることや出来ないこと。グッとくるね!
設定が面白いと思った!キャラクターも好き!終わり方としても良き!ただまぁ、内容が普通。そんな感じです!
あの世界で、これからもこの先も2人は暮らして欲しいな
あと、、、アリスとテレスって何?
感動は遅れてやってくる優秀作品
少々わかりずらい世界観にも関わらず、説明口調がないのでなにも考えずに見ていると置いて行かれるかもしれない。難解といつほどでもないのでちゃんと見ていたら理解できるはず。
序盤の退屈な日常に謎を散りばめて、後半に徐々に世界の謎が判明していく盛り上がりはわくわくした。なんでと思う言動、行動も後からはすべて意味があったんだと理解できてキャラがしっかり生きていると感じるから感情移入してぐっと感動するものがあった。多くの人に見てもらいたい作品。
現代日本を比喩しているかの様だ。
鉄鉱石が取れる製鉄所のある街。
ある日製鉄所で爆発事故があり時空が裂けた?
その日からこの街だけ何も変わらない、時間の進まない、サザエさんの様な世界になった。
いつまで経っても冬のまま、妊婦はいつまで経っても子供が生まれず妊婦のまま、中学生は何年経っても中学生のままの姿で何年も時間の進まない世界に街ごと閉じ込められた。
そしてこの世界では何かを変えようとすると時空の裂け目ができて不安定な世界になってしまう。
よって何も特別な事はしない、変えようとしない事で自分達の世界を守る事にした。
何もしなければ製鉄所から謎のオオカミの様な煙が時空の裂け目を修復してくれる。
そんなヘンテコな世界が舞台の物語。
中学三年生の正宗と同級生の謎の少女睦美、
睦美が製鉄所で世話をさせられている謎の少女五美。奇妙な世界の恋愛と青春群像劇。
何も変化も許さない、新たな恋愛すら御法度。
心の大きな揺らぎですら時空が不安定になる。
危ない事をやっても死なないし大怪我もしない。
その代わり掟を破った者は煙の狼に消されてしまう。
窮屈感と欝屈した何も進まない世界。
そこをどうやって打ち破るのか?打ち破れるのか?住民の選択は現状維持か改革か?謎の少女五美とは何者なのか。
どこが現代日本の比喩かと言うと日本と言う閉じた世界での世界との乖離、何かを良くしよう世の中を変えようと言う事への圧力みたいな物を感じる所。今のままで変える必要は無い、今のままで良いのだと言う消極性が日本の発展と繁栄を阻害している様に感じる。それ故に日本は衰退の道に入っている。しかし本人達はそれに気付いていない。この映画の中の街そのものだ。
そう言った皮肉すら感じる。
是非映画を見て感じて欲しい。
アートと現象と主題歌が魅力の全てな気もする
手放しに良かったのは、美術の凄さと、現象と、映画の内容を非常に想起させる中島みゆきの心音という主題歌です。
まず映像がとても綺麗です。背景のショットひとつひとつが、まるで絵画のようです。描き込みがすごい。
また、その背景の前のキャラクター達が引き起こす現象について、シーン一つ一つのこだわりを感じます。引き起こることが不条理なく、世界観の法則によって、繊細に描くことを頑張っています。
主題歌は、圧巻の一言。映画を見た者は、中島みゆきの他の曲も聞きたくなるでしょう。
ここからは自分があまり納得いかなかった要素です。
語りたいのはキャラクターです。
まず、予告では映画の仕掛けについての世界観の不条理を解く中にドラマがあるような触れ込みでした。が、実質は殆ど思春期の少年少女の悩みを中心とした割と普遍的なものが強く、思った以上にキャラクター達の意思が平べったいというか、動機の味付けが薄かったのがとても残念です。
あと、アニメ作品においてとても重要な要素だと自分は思っているのが、主人公の容姿です。あ、ビジュアルが良い悪いとかそういう話ではないんです。それで言えば今作の主人公正宗くんはかなりのイケメンでしょう。
そうではなくてですね、人目見て、口で説明しなくても性格がわかるほどの強いキャラクターを持つことも、アニメ作品においては非常に重要なんです。
パッと見て、正宗くんの性格を想像出来ないんですよ。優しい子にも見えるし、やさぐれた子にも見える。良い意味で言えば、複雑性と内に秘めた思いが強い思春期の少年、と言えるんでしょうが、それは本編を見たから分かることであって、結局コンセプトが分かりづらいのでパッと見で伝わらないんです。
これはヒロインの睦実も同様です。分かりづらいっ。
なんならですね、不思議な少女イツミ、父の昭宗と叔父の時宗、同級生の笹岡のほうがよっぽどキャラが立ってるんですよ。パッと見の見た目通りのことを作中でやるので。
有り体に言えば"主人公とヒロインのキャラが弱い"です。訴求力が足りない、だからどこか薄っぺらい。薄っぺらさが人間味を感じず、主人公の視点から見る物語に心が動かない。
美術も世界の仕掛けも頑張ってて、そこに物語をのせる技術、主題歌は素晴らしいのに、そこに生きるキャラクターがイマイチなのが、とても残念でした。
評価してるところは皆さん、世界観の仕掛けですけど、それを解き明かしたからなんなんですかね?とも思えてしまう。ぶっちゃけ。
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