「変化を望まぬ人達の暮らす工場の街。中学生の男女と一人の少女との出会いが、この街と人の運命を変えていきます。鑑賞後の余韻が凄く、好き嫌いが分かれそうな作品です。」アリスとテレスのまぼろし工場 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
変化を望まぬ人達の暮らす工場の街。中学生の男女と一人の少女との出会いが、この街と人の運命を変えていきます。鑑賞後の余韻が凄く、好き嫌いが分かれそうな作品です。
岡田麿里さんの脚本作品は、劇場用アニメを中心に
何本か観てきました。秩父三部作など。
一番最近観た「空の青さを…」は良かった。・_・ハイ
この作品も気になっていたのですが、ようやく鑑賞
することができました。
さあ鑑賞
ふんふん
エンドロール…
…
終了… えっ??
う~ん
観た感想を一言で …と聞かれたとして、正直
返事に困る作品を観てしまった感じです。・_・;
あのエンディングをどう受け止めるかで
評価も180°違ってくる作品のように思えます。・_・;
「理解し難い不親切なエンディング」
「色々な想像をさせるエンディング」
天の邪鬼な私は、その両方を感じ取りました。
鑑賞直後は「えっ?」 でしたが、
日が経つうちに「あれはこういう事に違いない」と
考えることを楽しんでいたりします。
※これを書いているのは鑑賞後4日目。
まだ自分の脳内では完結していません。うー。
◇
工場のある地方の街でのお話。
一見普通の街に見えるが、実は普通ではない。
時折、空にひび割れが出来るのだ。
そのひびを、工場から立ち上る白煙が修復する。
煙は白い竜の姿となり、ひび割れた空を直していく。
やがてヒビは消え、人も日常の暮らしに戻る。
主人公は、そんな街の中学2年生。
仲間と共に「普通に」暮らしている。
だが、ここでの普通はやはり普通ではない。
・人は自分が変わらないように務め
・中学生も車の運転ができる
・「自分ノート」に自分を記録しては、自分が
昨日と変わっていないことを確認する
ひとつの街全体が、とても危ういバランスの上に
成り立っているようなのだ。
誰かが「変わりたい」と考えると、世界が揺らぐ。
「消えてしまいたい」と口にした人はひびの中に消える。
◇
この作品の登場人物の数は、多い。
その中でもお話の重要な人物と言えるのがこの3人。
・菊入正宗(中2)
・佐上睦実(中2)そして
・少女(最初は3~4才くらい?)
工場の中、敷かれた線路の中に入り込む正宗。
目の前に小さな女の子が現れる。
話しかけるのだが、通じているのかいないのか…。
そこに現れる佐上睦美。
この女の子の世話をしているらしい。
そして正宗にも、世話を手伝えという。
訳が分からないまま、その後も工場に足を運ぶ正宗。
睦美との仲も、少女との関係もゆっくり進展する。
いつの間にか、少女は大きくなっている。
彼女だけがひとり成長しているのだ。
自分の気持ちを言葉にするようになった少女に
正宗は思いついて名前をつける。
「いつみ」
睦美よりも罪が一つ少ないから「いつみ」。
少女もその名を気に入った様子なのだが
その場に戻ってきた睦美が、名前をつけた正宗を
非難する。
” 私たちはこの子に深く関わってはいけない ”
この少女は、街の外から迷い込んできた。だから…
そういう睦美は、他にも何か大事な事をを知っている
らしいのだが…。
◇
最終的に、正宗と睦美は決断し行動します。
少女を元の世界に戻そう と。それがきっかけで
この街が消滅してしまうのだとしても…。
一方で、この世界が少しでも長く続くように と
少女を元の世界に帰すまいと動く人びとも。。
さあどうなる、この街。そして正宗たち。
とまあ
おおむねこんな感じでお話は進みます。
登場人物の多さと、それぞれの思惑とが複雑に
絡み、理解に頭を使う作品でした。
この街での、正宗たちの生活は生き生きと描かれて
いたと思います。
ラスト近くまでの展開にもリズム感があって良い感じ
を持って観てました。
なので、基本的には観て良かった。
満足です。
ただし、やはりあのエンディング。
考え甲斐があるというか何といいますか
単純に一目瞭然な終わり方ではありません。-_-;
観た人の好み等で評価が分かれそうな作品です。
興味が出た方は、その目でエンディングを
確かめてみて下さい。
決して「つまらない」作品だったとは
思っておりません。はい。・_・
で
◇鑑賞後6日目(わーい)
主題曲の「心音」(by 中島みゆき)。
上映終了後に、年配のご婦人方数名が ” 未来へ~♪” と
口ずさみながら退席していたな と思い出しました。
確かに覚えやすいフレーズです。
歌詞の他の部分はどんな内容なのだろうかと気になり、
Spotifyで聴きました。(歌詞も表示できます♪)
この作品のために書き起こしたのか? と思えるような
内容の歌詞でした。(事実がどうかは確認していません)
何回か繰り返し聴いている内に、こう思えてきました。
# 現実の世界から、まぼろしの街に少女が迷い込む
# 迷い込んだ先は、少女の父と母の育った街。
# その街は、工場の火災事故で大勢の命が失われた。
# その現実を受け入れることの出来ない人達が、
# 閉じた時間の中で毎日を繰り返している。
# それほど親しくなかった中学生の父と母。
# 迷い込んだ少女を現実の世界に送り返そうとする。
# 上手くいけば,少女は未来の現実に戻る。
# その事で、まぼろしの街が消えるとしても…。
こう考えた上での、あのエンディング。
少女は未来の現実世界に戻ったのでしょうか。
◇最後に
タイトルの意味が、未だに理解できません。+_+
まぼろし工場の街。
「アリスとテレス」は「アリストテレス」から。
アリストテレスは古代ギリシャの人。プラトンの弟子。
哲学を始め、様々な学問の始祖のような学者らしいです。
この作品の内容に関わるようなことを、アリストテレスは何か
述べていたりするのでしょうか…。(…不勉強)
公式サイトや他の方のレビューで何か分かるかなぁ。
ということを期待しつつ、レビューを見に行ってきます。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
・_・
・_・
・_・
・_・
・_・
・_・
・∀・
◇以下、おまけ(あれこれと考えてみた推察 @_@;)
以下は削除した上でUPしようと思ったのですが
この作品ほどあれこれ考えた作品も珍しいので
思考過程を書き残して置こうと思って追記します ・_・;
■町の外は「現実」なのか「死後の世界」なのか
この街では、「いつみ」だけが成長を続けていた。
いつみだけが「外からやってきた」からなのか。
ならば「外の世界」とは「生きている者の世界」で
「工場の街」とは「生きてはいない者の世界」なのか
「生きていない者の世界」は、その存在がとても脆く
そこから「消えたい」と願えば「消えて」しまう。
「消える」とは
存在の消滅なのか、現実世界への送還なのか。
前者なら「死」。
後者なら「蘇生」または「神隠しからの帰還」。
そう考えたなら、この「まぼろし工場」の位置づけは
「三途の川」のようなものなのだろうか。?_?
正臣と睦実は「いつみだけ」を外の世界にいける列車に乗せた。
「生きている者」は現実の世界に戻さなければと考えた。
その結果は…
■工場跡の廃墟を尋ねてきた少女は「いつみ」なのか
人の生活の痕跡など、何もない廃墟。
そこをタクシーで尋ねてくる少女が一人。
携帯電話で、「母親」と会話をしている。
この「少女」は「いつみ」なのだろうか。
電話の相手は「睦実」なのかそれとも…。
ああああ また思考のループ。
美紅さん、コメントありがとうございます。
普通は「原作」があって「脚本」なのでしょうけれど
この作品の場合はどうなのだろう と気になりました。
もしかしたら「脚本」→「作品」→「原作」の順番に
出来たのではないだろうか。と。
そんなコトを考えてしまうのも、作品の内容がほぼ原作に
沿って書かれているように感じたからなのですが、もしか
したら仕上がった作品から文字を起こしたのかな と思える
位、原作と作品の間の違和感がありませんでした。
と、いうかまあ 原作と脚本が同じ人なワケですから、どの
順番で書かれていても大差ないのかもしれませんが。・_・;
※美紅さんのレビュー見当たらなかったので、とりあえず
ここにコメントしておきます ・_・)
再びコメントを有り難うございます。
原作を読まれたのですね。時を駆けたのは五実(沙希)だけと言うことでしたか。あの廃工場のシーンは喩え難く美しかったですが、おっしゃるように正宗と睦実は生者として、まぼろし世界を抜けられたことになりますね。
想い想われる力がそれを可能にした…と言うほど、シンプルな話じゃないと思うのですが。確かに不思議なことが多い作品です。
コメントを有り難うございます。この世界観と言うより、この世界の仕組みが把握できずに、僕は観賞から投稿まで3か月近く! 経ってしまいました。他のことも、もちろん考えていましたが…笑
命と引き換えに五実を送り出した正宗と睦実が、死者にせよ、望み儚い生者にせよ、切なくて仕方ないと言うのが、本音です。おっしゃるように、あの不思議で不可解な終わり方。五実は未来に、無事着地できたのでしょうか?