「監督がのびのびとしてる感じ」アリスとテレスのまぼろし工場 白波さんの映画レビュー(感想・評価)
監督がのびのびとしてる感じ
岡田麿里、監督第2作目になるジュブナイルファンタジー作品。
制作はMAPPA。それとキャラデ石井百合子に見られるように、一作目「さよ朝」のメインスタッフで構成されているようでした。
トレーラーで印象的だったのが美しい作画に美術。
初の劇場版オリジナル作品とありMAPPAも気合入れたのでしょう、本編でもそのクオリティには驚かされました。
そんな世界に横山克の音楽がすごいフィットしているんですね。
物語を後押しするような、中島みゆきの歌も素晴らしかったです。
それと、思春期のドロドロとした感情に恋愛模様、そこにちょっとしたエロ要素などもあって、今作は「マリーらしさ」がすっごい出てましたね。
なので明確に好き嫌いが分かれるとは思いますが、そんな事は気にせずのびのびとしてる感じでした。
あと純文学的な要素が強く、ここら辺からもタイトルに繋がったんでしょうか。真っ直ぐに受け取ると睦実と五実でしょう。
舞台は時間や場所が閉ざされた町での物語。
序盤は世界観や設定などはふわっとしか見せずゆっくりとした進み。
中盤から段々とその世界が見えてきて、終盤からはどっと押し寄せてきます。こうなると終始ワクワクしてました。
終盤は視覚からの情報量も多く、幾つもの世界がレイヤーを重ねたような映像は実に美しかったです。
ずっと横たわる閉塞感と見る事のできない夢、それぞれの居場所と託す未来。
残りたい者に進みたい者。それは誰も悪くなくて、ただ自分のあるべき場所が欲しかっただけに見えました。
それにしても流石、揺れ動く不安定な思春期の描き方はうまい。
複雑そうに見える設定も結構あやふやでただ閉鎖されているだけ。
これも彼らの“今この目に映るものが全て”って感じだったと思います。全部が衝動的な感じなんですね。
そんな彼らの衝動に何度か涙した、とても切ない物語でした。
白波さん、この作品を含めて沢山の共感をいただきまして
ありがとうございました。
この作品、仰る通りに好き嫌いが分かれそうと思います。
何よりも、予備知識を持ち合わせた上で鑑賞しないと、
最後のシーンで「??」になるなと心底思いました。・_・
2回目を観たいと思いながら時間が合わず、このまま上映終了
になってしまいそうな感じです。 うーん残念…。
DVDかサブスクとかで、もう一度観てみなければと思い
つつ、パンフレットを見ていて一点気の付いた事が。
ページの左下(右下)にページ番号が振ってあるのですが
46ページには「四睦」
50ページには「五実」 と振ってあります。
見つけて何とも微笑ましい気分になりました。
こういう遊び心は大好きです。