劇場公開日 2023年9月15日

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「「生きる」ということ」アリスとテレスのまぼろし工場 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「生きる」ということ

2023年9月2日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

岡田麿里監督で、MAPPA制作ということで期待していた本作。久しぶりに試写会に参加させていただき、一足早く鑑賞してきました。

ストーリーは、製鉄所の爆発事故により時間が止まり、閉鎖空間に閉じ込められ、いつか元に戻るために何も変化させないことをルールとした町・見伏に住む中学生の菊入正宗が、同級生・佐上睦実に誘われて向かった製鉄所の第五高炉で、狼のような少女・五実と出会ったことで、何年も変化のなかった町や人々の心が大きく動き出していくというもの。

おもしろそうな設定、謎の少女の存在、この街の結末など、興味をそそられる内容です。ただ、岡田麿里監督の前作「さよならの朝に約束の花をかざろう」では、人物の心情の繊細な描写を感じる一方、全体的なまとまりや整合性には疑問を感じていました。そして、本作でも同様の感想となりました。

正宗が睦実に対して抱く自覚のない恋のような思い、睦実の正宗に対する距離の取り方、五実が正宗を慕う気持ちなど、少しずつ変化していく様子を、言葉や表情や態度で感じ取らせていたのはよかったです。しかし、終盤にさしかかっての同級生や大人たちの変化はいささか唐突で、テーマへの絡め方もやや乱暴に感じました。時が止まった空白期間の描写がほとんどないことで、終盤のたたみかけるような展開に違和感を覚えたような気がします。時が止まったことで、体は成長してないようですが、心の成長はどうなのでしょうか。この町の誰もが、変化をタブー視して、心に蓋をしてきたけれど、本当は抑え込んできた強い思いがあったというような描写があれば、もう少しすんなり受け入れられたかもしれません。

とはいえ、本作から「生きる」とはどういうことなのかというメッセージを受け取った気がします。変化を恐れ、全てを諦め、痛みも感じない、心も動かさないのは、生きているとは言えない。誰かを思い、心が揺れ、痛みを知る、自分を知る、そんな心の成長こそが「生きる」ということなのではないでしょうか。

ちなみに、タイトルにある「アリスとテレス」は出てきません。本当の意味で「生きる」ことを選んだ見伏の人々に、アリストテレスの「希望とは、目覚めていて抱く夢をいう」という言葉を当てはめたのかもしれません。でも、ちょっと伝わりにくいタイトルだと感じました。

キャストは、榎木淳弥さん、上田麗奈さん、久野美咲さん、八代拓さんら声優に加え、林遣都さん、瀬戸康史さんも参加しています。主要キャラは声優が担当していますので、その点は安心して観ていられます。

おじゃる
マサシさんのコメント
2024年1月26日

共感いたします。フォローをさせて頂きます。
よろしくお願いします。

マサシ
Uさんさんのコメント
2023年12月18日

そうですね。時が止まった日と、それがどう言うことかを、皆が理解し始める空白の季節の描写が欲しかったですね。

Uさん
満塁本塁打さんのコメント
2023年9月17日

おじゃるさん 返信お気遣いありがとうございました。哲学はムリのジジイでございました。長々と理屈の世界なので・・と言い訳する私でした。ありがとうございました😊

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2023年9月16日

アリストテレスは私如きには読み取れませんでした。無念❗️

満塁本塁打