「人間、オートボット、マクシマル、ワン・チーム!」トランスフォーマー ビースト覚醒 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人間、オートボット、マクシマル、ワン・チーム!
2017年の『トランスフォーマー/最後の騎士王』でシリーズももう限界…と思ったが、『バンブルビー』がシリーズを救った。
上手くやりゃまだまだ続けられる。本家が活動停止になる訳ない。再起動。
と言っても前5作の続きではなく、『バンブルビー』のその後。第1作より前。
『バンブルビー』が繋いでくれたシリーズの灯火を鎮火させないか窺い知れる。文字通りの新章スタート。
舞台は90年代。オプティマスたちが地球に来てまだ間もない頃。
NYブルックリンで暮らすノア。元軍人で有能なプログラマーだが、うだつの上がらない日々を過ごし就職難中。
病気の弟の治療費の為、知人の誘いで車泥棒に手を染める。そこで出会った一体のオートボット…。
人間とオートボットの初めての出会いから始まり、原点回帰。
シリーズ後半の何にうんざりって、ごちゃごちゃした設定。
第1作の善悪ロボットの闘いのシンプルさが良かったのに、次第にあっちにこっちに派閥が分かれて、もはや誰が何々だか。
その点、本作も分かり易く。ここも原点回帰が見られる。
勢力は3つ。
まず、敵。星を丸ごと食い尽くす“ユニクロン”。その配下の“テラーコン”。リーダーは残忍なスカージ。
対するオプティマス率いる“オートボット”。
そして、新たなロボット生命体“マクシマル”。リーダーのプライマルはゴリラ型などビースト戦士たち。
オートボットとマクシマルが手を組んで、共通の脅威であるユニクロンとテラーコンに挑む。
今回話題は、ビーストたち。
私は『トランスフォーマー』は実写から入り詳しくはないが、アニメーションシリーズの『ビーストウォーズ』で登場した動物型トランスフォーマー。
シリーズに大変革をもたらしたという人気の存在が、遂に実写シリーズに参戦。ファンにとっては歓喜もの。
ゴリラ、ハヤブサ、サイ、チーターをモチーフ。
オプティマスたちと決定的に違うのは、体毛や皮膚がある。より生命体らしさを感じる。
ビーストの名の通り、躍動感はたっぷり。今回闘いの場は街中ではなく自然の中が多く、縦横無尽に暴れ回る。
彼らはオプティマスたちが地球に来る遥か前から来ていた。故郷の星をユニクロンに食われ、前リーダーが犠牲となり、地球へ。彼らは時空の扉を開く“トランスワープ・キー”を守っていた。ユニクロンはそれを狙う。もし、それが敵の手に落ちれば…。
キーはオプティマスたちも手に入れたい。キーがあれば故郷のサイバトロンに帰れる。
キーはマクシマルたちが二つに。その一つを、博物館のインターンのエレーナが見つける。
エレーナもノアもロボットたちの争いの渦中へ。
ユニクロンの手に落ち、地球は滅びてしまうのか。
マクシマルたちは守りきれるのか。
オプティマスたちはキーを使って帰る事が出来るのか。
ノアたちも含めれば四者四様。それぞれに正義や信念がある。邪心がある。
人間、オートボット、マクシマルたちも最初から協力的ではない。
共通の敵、それぞれの目的の為に共闘。
前5作では人間たちに理解を示していたオプティマス。が、本作では地球に来たばかりで人間をよく知らず、威圧的な態度を取る。唯一、先んじて人間と交流を深めたバンブルビー以外は。
ノアと最初に出会ったのはバンブルビーではなく、初登場のミラージュ。お喋りでチャラキャラ(故に吹替ではあの芸人)。次第に友情を築いていく。これも原点、サムとバンブルビーを彷彿させる。
ソリが合わなかったノアとオプティマス。と言うか、似た者同士なのだ。ノアは家族を、オプティマスは仲間を思い、一人で責任を背負い頑固な面も。
闘いの中で彼らも築き上げる。オプティマスが人間たちに心を開いた瞬間。
ドラマは序盤は退屈だった。が、オートボットたちと出会い、本題が始まると、熱量や面白さが増していった。
さすがに80年代青春ストーリー仕立ての『バンブルビー』ほどではないが、本家よりかは上々。
ノアと弟、ノアやエレーナやオプティマスたちやマクシマルの絆。
合言葉は“ワン・チーム”。
これらベタだが、ストレートに熱い。
スカージからの攻撃を身を呈してノアを守るミラージュ。
ラスト、絶体絶命の危機のオプティマス。それを助けるノアとプライマル。
これら感動的でもあった。
スカージとの闘いで倒されたバンブルビー。復活し、反撃は興奮!
『トランスフォーマー』はいつだって王道なのだ。
今回監督はマイケル・ベイからスティーヴン・ケイプルJr.へバトンタッチ。
彼が人気シリーズを継承するのは『クリード』に続き二度目。
ド迫力のVFXとアクションとスケール、熱いドラマ…しっかり本作でもシリーズの定番を踏まえている。
それでいて、スピルバーグやベイ作品へのユニークなオマージュ。
音楽やアイテムに90年代カルチャー。日本カルチャーへも色濃い。
全く関係ない事だが、ロボットゴリラのプライマルがメカニコングを彷彿させたのは私だけ…?
アンソニー・ラモス演じる主人公像はシャイア・ラブーフ演じたサムに近い気もしたが、あちらのオーバー演技より等身大。
ちと残念だったのはエレーナ役のドミニク・フィッシュバック。あまり魅力を感じられず。何だかんだミーガン・フォックスはセクシーで、へイリー・スタインフェルドが魅力的だったか。
闘いの舞台のマチュピチュ遺跡は荘厳で、周囲の大自然も豊か。
アクションやVFXやスケールはいつもながら。
地元で上映しなかった事もあり、本家を劇場大スクリーンで見たのは『~ダークサイド・ムーン』以来。『トランスフォーマー』とハリウッド王道エンタメを堪能。
が、シリーズ最高の迫力とスケールとまでは行かず。『~リベンジ』や『~ダークサイド・ムーン』ほどの迫力やスケールには及ばず、やはり1作目のワクワク興奮は最高潮だった。
後こんな事言ったらファンから怒られるかもしれないが、ビーストたちは確かにエキサイティングだが、『~ロストエイジ』の恐竜型オートボットの方がインパクトあった。好みの問題かもしれないが…。
こちらもいつもながら。ご都合主義、強引な展開、ツッコミ所は多々。オプティマスはミラージュに「目立つな」と注意するが、いやいや、輸送機型老オートボットの方が目立ってますって!
そんな点も踏まえてこその『トランスフォーマー』。シリーズ最高作ではなかったが、V字回復。素直に楽しんだ。
ラストシーン。面接を受けるノア。
普通の企業かと思いきや、そこは政府の秘密機関。
その名は…
えっ!? まさかのコラボ!?
今風に言うと、“ハズブロ・ユニバース”!?
再起動した『トランスフォーマー』の変形は今始まったばかり!