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「93年、歴史が動いた瞬間を抑制されたタッチで描くHBO映画」OSLO オスロ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
93年、歴史が動いた瞬間を抑制されたタッチで描くHBO映画
トニー賞を受賞した演劇作品を映画化。劇作家本人が脚色を担当、スピルバーグが製作総指揮に名を連ね、彼の常連ヤヌス・カミンスキーが撮影を務めるなど手堅い布陣で臨む。物語は、93年のイスラエルとパレスチナによる和平合意にまつわるもの。締結の裏側ではとあるノルウェー人夫婦がセッティングした秘密の外交ルートが貢献を果たしたという。舞台劇の特色を活かし、大部分は交渉の場となったゲストハウスにて抑制されたタッチで展開する。いがみあう出席者が顔を合わせる時、ホスト側はいかに相手を尊重し、場を和やかに盛り上げるのか。さらには、誰もが人の子であり家族であり、何よりも憎しみを超えて平和を希求する者たちであることをいかにして思い起こさせるのか。主演二人が緊張感の中で微笑ましいやりとりを織り交ぜ、また時に揺るぎない意志の力で暗闇に光を差し込ませようとする。硬派なドラマながら、歴史好きにとっても興味の尽きない作品だ。
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