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OSLO オスロのレビュー・感想・評価
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93年、歴史が動いた瞬間を抑制されたタッチで描くHBO映画
トニー賞を受賞した演劇作品を映画化。劇作家本人が脚色を担当、スピルバーグが製作総指揮に名を連ね、彼の常連ヤヌス・カミンスキーが撮影を務めるなど手堅い布陣で臨む。物語は、93年のイスラエルとパレスチナによる和平合意にまつわるもの。締結の裏側ではとあるノルウェー人夫婦がセッティングした秘密の外交ルートが貢献を果たしたという。舞台劇の特色を活かし、大部分は交渉の場となったゲストハウスにて抑制されたタッチで展開する。いがみあう出席者が顔を合わせる時、ホスト側はいかに相手を尊重し、場を和やかに盛り上げるのか。さらには、誰もが人の子であり家族であり、何よりも憎しみを超えて平和を希求する者たちであることをいかにして思い起こさせるのか。主演二人が緊張感の中で微笑ましいやりとりを織り交ぜ、また時に揺るぎない意志の力で暗闇に光を差し込ませようとする。硬派なドラマながら、歴史好きにとっても興味の尽きない作品だ。
今、観ると、いろんな思いが出て来てしまう。 どっちがよいかわるいか...
今、観ると、いろんな思いが出て来てしまう。
どっちがよいかわるいか、そういう次元の話ではもはやないように思える。
争いは続き、新たな憎しみをうみ、負の連鎖。
今まさにその長きに渡る負の連鎖が、多くの人の命を奪っている。
what will become of us?
我々はどこにいるのか。こんなにも違う方向にすすみすぎてないか。
スマホも携帯もなかった。タイプライターまたはワープロ?コピー機、固定電話、これで連絡を取りアラブとヨーロッパとアメリカを舞台に極秘裏にこれだけの成果を挙げたことにまず脱帽する。淡々と描かれる舞台裏、静かな葛藤大きな闘志。
最後にモナが記している問いように、このようなモーメントがあったということは決して無意味なことではない。しかし、2021年になって今なお、問題は解決どころか、パレスチナ問題も世界のほとんどの紛争や占領はより一層激烈に容赦なく軍事力や暴力装置を持つ側が圧倒し圧倒的に殺戮し収奪しているということに、眼を覆うしかないのか。what will become of us? この問いを持つことは、未来を担保することだが、様々なテクノロジーに彩られた現代であるにもかかわらず、ここまでの格差と悪意が制する世界において、いかに無為に感じられることか。どんなことでも可能なほどにテクノロジーが発達しているのに基本的にそれは持てる側の暴力システムと一体になっており、今もパレスチナではインティファーダ石礫を投げることしかできずそしてそれすらも許されていない。チベットでは。香港では。ウィグルでは。シリアでは。アラファトがあのように眩しい公の場に現れ笑顔を見せそれを世界中の人が見たという奇跡のような出来事、瞬間があった、それば儚い夢のような営為であったかもしれないがそれでも知恵と勇気と信念で奇跡を実現させたノルウェーの2人には脱帽する。もはや美しい世界なんでないと思うしかない現世界、されど、2020年代、人類もう少し何とかなろうよ、まだこの映画の頃は今の刺々しい競争世界と比して牧歌的であった。そして今はガザも西岸もどんどん追い詰められて、オスロ合意もお伽噺となってしまい、今この時にも多分石礫を持った少年が、そして石ころさえ手にもってもいなくても彼や彼女らが殺されているのだ、、、そのことを忘れずこの問いかけを続けるしかない。
アンドリュー・スコット好き
イスラエル・パレスチナ情勢いわゆるパレスチナ問題に尽力した夫婦を演じるルース・ウィルソンとアンドリュー・スコットの見ていて落ち着く安定感たるや。進行役に徹する形で決して介入しないという誓いのもと、人里離れたゲストハウスに招いて、当人たちで腰を据えた話し合いを始めさせるが衝突や問題は山積み。正式でない裏交渉の場、"祖父"や"父"。"お向かいさん"との和平は実現するのか?舞台的であることを認める。そしてワッフル食べたくなることも!現実は最後まで、そして今でも厳しい…。
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