「ただ、日常を描写する。」春原さんのうた caduceusさんの映画レビュー(感想・評価)
ただ、日常を描写する。
24歳の女性、沙知の日常を、固定カメラで映し続ける。
美術館を辞めたりなど、物語の設定はあるようだが、劇中に特別な説明はなく、作品紹介やホームページなどを先に見ておかないと、そのあたりはまったくわからない。
いろいろな人達が、お菓子を持って部屋に訪ねてくる。その関係性もよくはわからない。
固定カメラの前を、登場人物が歩き、フレームをはずれると足音が響く。
誰もいない室内の玄関が映し出され、階段をのぼる音が響く。やがて足音に変わり、鍵を差し込む音がして、ドアが開き、沙知が入ってくる。
固定カメラは小津安二郎の撮影手法だ。そういう表現を使いたかったのだろう。
「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」という短歌を元にしたイメージ映像的作品。
レズビアンのパートナーを失った喪失感をテーマにしているということのようだ。
表現方法はワンパターンとも言え、固定カメラという手法を繰り返す。
情緒的ともいえるが、突然泣き出したりするなど、意味のわからないシーンも多い。
途中で、沙知の髪が赤茶色に変わる。実際には、脈略のない作品とも言えるが、こういった作品に芸術性を感じる人も、一定数いるのかもしれない。
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