「とにかく色々な意味で、「外し方」に身を委ねるべき一作」猫は逃げた yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
とにかく色々な意味で、「外し方」に身を委ねるべき一作
今泉力哉監督と城定秀夫監督、彼らの近作を好きな人なら必ずどこか響くところのあるであろう作品です。
表題どおりの事件はもちろん起きるし、実は予告編で結構重要な場面を見せちゃってるんだけど、そこに至るまでの過程が全く先の読めない展開で、観ている側は見事に城定秀夫脚本に翻弄されてしまいます。
予告編にも、夫に話しかけているように思わせておいて、実は猫(カンタ)に話しかけていた、という印象的な映像が含まれていましたが、とにかく演技にしてもセリフにしても、そして映像の切り取り方にしても、必ず何らかの形で観客の予断を、ちょっとだけ”ずらす”工夫が盛り込まれています。こうした演出・展開の巧みさはさすがの一言。
脚本では簡潔に書かれていたという、劇中のある作品についてのアイデアは、今泉監督が独自に味付けし、膨らませたそうで、城定監督も仕上がりを見て驚いたそう。このさりげないけど、むちゃくちゃ入念に仕組んだ付け足しもすごい。この部分はまた、作中で一番笑ってしまうポイントになっています(繰り返されるフレーズが頭から離れなくなる!)。
そしてもちろん、「猫映画」としても素晴らしく良くできていて、主人公(?)のカンタだけでなくそのお友達もまた、一体どうやって演技を付けたんだ、と感心させられます。とても良くできた作品なんだけど、四者の恋愛模様を結構直接的に描いているため、対象年齢がちょっと高め。この点だけは留意しておきましょう。
コメントする