「猫は逃げたら何が残る…?こんがらがった4つの気持ちに見える想いと滑稽さ」猫は逃げた たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
猫は逃げたら何が残る…?こんがらがった4つの気持ちに見える想いと滑稽さ
『愛なのに』を観てから早2ヶ月。待望のもう一編をようやく。序盤はヌルく感じたけど、愛の歪な形が浮き上がって来たときにはトリコ。やっぱり好きだな…。
こちらは城定秀夫氏の脚本、今泉力哉監督のメガホン。比べることでもないが、柔くも繋がったこの世界観を思い出しながら潜っていく。下北沢トリウッド特有の距離感もあってか、これまた余韻が心を軽くする。服が鮮やかに見え、晴れた空に好きな人を思い浮かべる。心地良い休日だ。
「猫をどちらが飼うのか…」不毛な様で大事な議論、なんて彼らは言う。離婚寸前の夫婦に巻き起こる、こんがらがった愛の行方。言い訳のように考えていたはずの猫の引き取りを、気が付けば猫によって見透かされていく。そこに滲む滑稽さと人間らしい愛らしさがクセになる。多面的な表情と考えをシーンによって出す顔を変え、それを魅力的に映し出す手腕に改めて驚く。
「L/R15」の主題でもある、R-15の描写も、もちろんきっちり押さえられている。しかしながら、城定秀夫監督の撮り方が上手いのだと感心する形に。こちらは動機ではあるとはいえ、やっぱりそれに説得力を持たせられることは容易でない。その比較が出来るのもこの企画の面白さかも。
主演は山本奈衣瑠さん。本作をきっかけに知ったが、どの色にも染まっていないその魅力に唸る。カジュアルなコーデに可愛らしさを覚えつつ、普段の姿に少しの油断とスイッチの切り替えを持っているようで、一段と引き込まれる。
毎熊克哉さんも良いナヨナヨ具合でちょっと腹が立つし(笑)、井之脇海さんも可愛い顔して意外と攻めるところは攻めるいい役どころだった。そして何より手島実優さん。HARIBOで何でも出来ると思ってる彼女よ。いい感じの小悪魔で、もっとこういう役どころで見たいと言わせてくれる説得力をしていた。
ちょうどK2で今泉力哉監督の特集をしていた。恋愛映画の名手と例えられることが多くなってきた彼だが、脚本が変わるとまた違った説得力になる。凄く面白い体験だった。