「面白いけど…」12ヶ月のカイ R41さんの映画レビュー(感想・評価)
面白いけど…
日本のSF作品としてそこそこ面白さがあり、スリリングさもある作品
近未来の日本 ソムニウム社が開発したヒューマノイドという商品
昨今の若者たちが出会い系アプリで知り合うことから、その先にある選択肢とはもしかしたら人間ではないのかもしれないという、基本的には手塚治虫時代から描かれた物語をアレンジしている。
さて、
テンポのいい展開で飽きることなく見ることができた。
しかしながら、
SFというジャンルであるならば押さえておかなければならない部分がいくつかスルーされていたのが惜しい点。
まず、そもそも人々の間ではこのヒューマノイドなるものが何であるのか論じられておらず、それ故妊娠という概念に「?」が付きまとってしまう。
この時代でタイムリーだったのは、ナノボットの登場と人工生命体開発の成功だ。
ナノボットとは細菌やウィルスと同じサイズで、人工生命体とは自分の分身を作り出せるものだ。
これは当時発表されており、もしかしたら実際にはこの数倍速く技術が進んでいる可能性がある。
これを最初に挿入することで、ヒューマノイドが何であるのかという考察を視聴者に想像させることができる。
これを前提とした場合、
例えば死体に処理をして人工生命体として肉体だけは蘇らせ、AIを搭載、プログラミングによって人間のようにふるまえる。
その不完全なものを新たに進化させる目的で誰かと交配させる目的があるという設定だったら面白いと思う。
まさにラザロ計画
リベリ計画のリベリとはラテン語の自由 彼らの目的だ。
これをしなかったのはもったいなかった。
また、その目的を「ヒューマノイドの本能と共存」と言っているが、プログラミングの概念を使っていることと、カイと登場人物たちとの会話、そしていったい誰がそれを目的としたのかという点、これらがヒューマノイドの意識について非常に矛盾を感じてしまう。
さらに、生まれた赤ちゃんがどう見ても宇宙人にしか見えず、ヒューマノイドそのものが何であるのかについて考察を許さない部分が残念だった。
例えばサルと豚のあいのこのようであれば想像がつくが、宇宙人では… どうしたらいいの?
キョウカは同級生たちに妊娠を告白するが、そもそも上記のような前提がなければ成り立たないことで、通常は誰かによって仕込まれた妊娠の可能性を疑うのが一般的だ。
そして、
母の嘘
あれはいったい何だったのだろうか?
敢えて想像できるのは、キョウカには正しい情報がいつも受取れないということだろうか?
出会い系であれ、友人の紹介であれ、ソムニウム社の実態、そしてカイ
誰もが正しいことを言わないということなのだろうか?
ここは非常にわかりにくかった
最後はSFらしく、ループ状態になる。
さて、、
SFっぽく描いた近未来ホラー
矛盾点は感じるものの、スルーすればなかなかスリリングに楽しめる。
この矛盾点を改善できれば日本のSFはもっと面白くなるだろう。