「SKIP」12ヶ月のカイ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
SKIP
『人間であるという秩序のための物語』という冒頭のインタータイトルから始るSFテーマであるが、その表現はCGやその他SF的要素の技法を取り払った(乳児の人形は演出)作劇になっており、現在社会のメタファーを表現したテーマ設定を落とし込んでいる作品だと感じる
女性の非婚、又は外国人排除、生殖機能の低下、出生率、そのような社会問題を、SFというジャンルに手伝わせて、しかしSF的視覚映像には仕上げずに、あくまで現代の世界観を基本に構成されている
しかし、この作品には経済的貧困という問題は含まれていない そう、いわゆる経済的に自立した女性達の物語なのである 自作HP制作の成功体験から、Webデザイナーという花形職業に従事している主人公が、愛玩動物を飼う様に人造人間をレンタルし、そして何の因果か、その人形の子供を身籠るという状況に陥る それでも、愛情を感じた主人公が産む決意をした直後、メーカーの思惑を知り、その目的に利用されたと知り、出産した異形の子供を殺そうとするが、人造人間に阻まれる 直後にメーカーの介入で、その気持をリセットさせられた女は又しても同じ轍を踏まんとするラストを描くといった内容である
皮肉が効いていて、充分愉しませて頂いたストーリーである 人間はやはりどこかで自分の選択肢を正解だと信じたいプライドを捨て去れない そこを漬込んだ外部の思惑であってもそれを良いように解釈して利用されてしまうのだ ご都合主義、又はリアリティを度外視した物語であっても、その帰結は現代社会に於いて寧ろ有り触れているのではないだろうか 子供をさらわれても、もう一度同じ過ちを繰り返すだろう主人公のポッカリ空いた虚無感と、切実な願望、そして願望を叶えたい強い努力 詐欺の手口に良くある一連の流れは、しかし現代社会に於いてそれを明白に描いている本作である
自分と対極にある友達が救助に来ても、でも寄り沿う人形に期待する、そのストーリーテリングにやるせなさ、堕落、そして愛おしささえも感じた構成である