「製作陣のイナゴ愛が凄い ※大したネタバレはなし」ジュラシック・ワールド 新たなる支配者 alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
製作陣のイナゴ愛が凄い ※大したネタバレはなし
「頑張って作ったから見てくれ!!私達の渾身の巨大イナゴを!!!!」という製作陣の声が聞こえてきそうなほど、イナゴ君が大活躍します。
もはや主役はイナゴ。頑張って作ったイナゴ君アピが凄まじくて何かもう見てられない(絵面的な意味で)。
まあ冗談は置いといて、主役は一応クリス・プラット演じるオーウェンのはずだけど、今回は伝説の1作目『ジュラシック・パーク』で主役だった博士2人がカムバックするとあって、流石に出番はこちらに譲っていました。あれだけの人数が出てきた割にはすっきり纏まっていたなと思います。
良くも悪くも『ジュラシック・パーク』を思い起こさせる作りで、大人数が複数のグループに分かれてあっち行ったりこっち行ったりした後、都合良く良い感じの場所で合流して力を合わせるストーリー。やっぱこういう話は、これくらい人数が多くてワーキャーやってないと盛り上がらないよな。
もはや脳みそ半分くらい失っているのでは?と不安になるレベルで記憶力の低い自分でも、こういう作品だけは人数多い方が好きです。
メインはやっぱり恐竜!で、皆でサバイバルしながらキャッキャしてるんですが、サイドにオーウェンとクレアがメイジーを引き取り家族になっていく姿や、親子の成長を描き、「血の繋がりより信頼で繋がる家族」のスタイルを提示する。
恐竜の種類も1作目当時より格段に増え、もうティラノが単独ハイライトを飾れる時代ではなくなった模様…悲しいが、仕方ない。ティラノ最強説は崩れたし、いやでもティラノはジュラシックシリーズの顔だし…という製作陣の悩ましさも感じられる。
1作目のようなエンタメ色の方が強い作品ではなく、ご長寿人気作品だからこそハッキリ問題提起に持って行ったのも良かった。
1作目を子供の頃に見ていた人が親になり、子供と観に行くこともあるだろうし、昔より一般人にも身近になり、より真剣に取沙汰されるようになった環境問題やバイオテクノロジーについて、親子で意見交換をした人もいたのでは。
そういう意味で、信頼で繋がる家族の形を提示したのも良かったと思う。オーウェンとクレアが結婚してるのかどうかもわからないし、メイジーをどうやって養子にしたとか、そういった話は全く出てこない。国に認めてもらうための契約や血の繋がりを完全に感じさせない、でもどう見ても「家族」だ、という説得力があって、ささやかかもしれないがこれも新しいスタイルの提示だったと思う。
ただ、初期メンバーと明らかに演技力に差がある俳優がいて気になったのと、やっぱり人数が多いのと場所が広くなったせいか、話があっちこっちするうえ恐竜が暫く出てこない…というか恐竜を思い起こさせることすらないようなシーンも結構あり、あれ?今『ジュラシック・ワールド』見てるんだよな?と思ってしまうような出来ではあった。
今思い出しても、一瞬他のアクション映画だっけか?と混乱する断片的な記憶がちらほら。何か『アンチャーテッド』より大冒険してなかった?
キャラも一人一人が立ってたし、格好良いシーンは多くて見てる時は興奮だったけど、多分ジュラシックシリーズっぽさはシリーズ随一の薄さ。普通にアクション映画?モンスターパニック映画?として見た方が良いかも。
シリーズ最終作だし色々やりたいこと、言いたいことが多すぎてミチミチに詰め込まれてる駆け足作品なんだろうなーと思って見始めたけど、意外と余裕のある作り。
でもその代わり、あっちであの人達がこれやって、こっちでこの人達がこれやって、と常に散らかってる感じはあります。人数が多いから、各人それぞれの個性を活かそうとするとこうなるんでしょうね。せっかく初期の博士2人を呼び戻したし、新たなペア・新たなキャラの活躍も見たいけど、新旧ペアでタッグを組ませたシーンもそりゃ入れたいよなと。気持ちはわかる!
個人的には、シリーズ最終作でこれだけ「らしさ」を薄めてでも1本の映画として整えられたのは素晴らしいと思うけど、ここに賛否両論は絶対出ると思います。「シリーズ最終作なんだから、今までで一番シリーズ『らしさ』を出してほしかったのに!」という意見は絶対あるはず。つーかごもっとも過ぎる。
でも、思い入れがある作品ほど欲張ってしまって、あれもこれも格好良く見せようとした結果バランスが悪くなったりクドくなったりする作品の方が遥かに多い中、これだけあっさりシンプルに纏めた手腕には流石の一言です。
あとスタッフのイナゴ推しも流石の一言です。まじで。
人間の赤ん坊サイズのイナゴ君が映るたび、我が家では「ウワァァァ」「出たァァァ」と目を背けてました。しかも大量発生。大量発生しなきゃイナゴじゃないよねって勢いで一面のイナゴ。4K画質で見たくない映画No.1。
DVDで視聴する方は、ぜひオマケ?の短編『バトル・アット・ビッグ・ロック』も見てほしい。短編と思えないくらいの満足度。元々短編も撮ってたスピルバーグだし、短編でも物足りなさを感じさせない「映画」を作ってくれています。
短編でこんなにワクワクさせてくれると思わなかったというか、最初に本編と間違えてこっちを再生しちゃったんですが、終盤まで全く気付きませんでした(アホ)。
シリーズとしては終わりでも、また気が向いたら恐竜映画撮ってほしい。短編でいいから。
スピルバーグはやっぱ少年の心を忘れねーわ、まだまだ現役だわと思わせてくれる作品でした。
個人的に、シリーズ最終作ってファンサービスに偏りがちで、めちゃくちゃ泣きながら「映画としての質はそんなでもなくね?」と心の中は白けてる不思議な感情を味わわせてくれる出来のことが多いと思ってたんですが、本作はシリーズへの愛は感じるけど、映画としてのバランス感覚も忘れてない、冷静さも同時に感じて、やっぱスピルバーグですわ…とちょっと感激。
『レディ・プレイヤーワン』辺りから、スピルバーグの本気が蘇った気はしていましたが、映画監督としての能力を見せ付けられたなあと見終わったあと感服でした。あっぱれ。
