「タングのかわいさを愛でる作品」TANG タング おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
タングのかわいさを愛でる作品
予告からロボット相手のハートフルなバディムービーと予想していましたが、だいたい思ったとおりの展開でした。夏休み中ということで、子守りを兼ねて甥っこと姪っ子を連れて行きましたが、二人とも楽しめたようでなによりです。大人には少々物足りなく感じますが、夏休みに親子で観るのにはぴったりの作品だと思います。
ストーリーは、家の裏庭に現れた旧型のロボット・タングを見つけた春日井建が、新型の家事ロボットに交換してもらおうと製造元を訪ねたり、修理を求めて中国の研究者を訪ねたりする中で、タングに隠された秘密がしだいに明らかになってくるというもの。子どもでも理解できるシンプルでわかりやすいストーリーとテンポのよさで、最後まで楽しく鑑賞できます。
本作の肝はもちろんタングで、その無邪気な振る舞い、豊かな喜怒哀楽が、観るものをほっこりした気持ちにさせてくれます。中でも、健にしだいに心を開き、友情を感じていく雰囲気がとてもよかったです。CGはややチープで合成シーンにも多少の違和感はあるものの、邦画としては許容範囲で、ノイズになるほどではなかったです。むしろ、愛らしい動きや表情、しだいに上達する会話のおかげで、どんどんかわいく見えてきます。
ただ、ストーリーが単純なぶんだけ、深みが感じられないのは残念なところです。序盤の健と絵美のケンカの原因もしだいにわかってくるとはいえ、健の過去の描き方があまりにも型どおりで、その後のタングとの交流から立ち直りの流れが薄っぺらく感じてしまいました。中盤以降のタングの誘拐から秘密が明かされるあたりも、やや子供だましな印象で、「うん、だと思った」という感じで、これまた拍子抜け。というわけで、細かいところはスルーして、タングを愛でることだけに集中して観るのがいいと思います。
主演の二宮和也さんはいつもの自然体な演技で、ロボットを相手にしても温かな雰囲気をつくり出しています。しかし、それ以上に観客の心をつかむ演技を披露したのは、共演の満島ひかりさん!やはりうまいです!ラストは彼女の演技だけで一気に感動的なシーンになりました。役の上でも、役者としても、二宮和也さんより上手なのは間違いないです。
※余談ですが、本作鑑賞後にコロナ感染してレビューが今頃になり、8月後半の新作もいっさい鑑賞に行けず、自宅療養を続けております。みなさまもどうぞ気をつけてお過ごしください。