「妻の誕生日に、カレーをつくっています。」その日、カレーライスができるまで 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
妻の誕生日に、カレーをつくっています。
クリックして本文を読む
侘しいなあ。その悲哀がスクリーンから染み出てる。
失った愛息、別居中の妻。情報はそれだけでも、彼の侘しさを知り得るには十分。連絡はとれるくらいの関係は維持してる夫婦が、なぜ離れて暮らしているのかは、おそらく息子を亡くした後の感情の行き違いや信頼の喪失なのだろうなあ。そこは彼にとっては後悔しきれない失態だったのだろう。このことは、それ以上、踏み込んではいけない気がする。だから映画でもグレーにしているんじゃないかな。そんな彼は、妻に未練たらたら。だから、カレーを作るのだ。おそらく、その味は唯一褒められた吉事だったんだろう。でも、妻もカレーを食べてるよ。まだ脈、あるよ。・・・たぶん、そう思う。知らんけど。ただ言えるのは、今日カレーをつくってしまっている僕は、彼の味方だってことだ。
この映画の前に、併映の短編「HOME FIGHT」
はじめ、後日公開の予告かと思った。兄妹役は、ラバーガール大木と伊藤沙莉。いやあこの二人がリモート画面に出て来たときには、もうすでにその配役の妙に「うまい」と唸った。口達者な兄妹のセリフは、それがアドリブなのか?と思わせるほどの軽妙、かつ間の自然さ。「オンラインで結婚して、子供つくって、そういう時代が来ると思うんだよね」ってバカバカしいことを真顔で言うアニキを持つ妹の鬱憤。価値観のズレ具合がおかしくて仕方がない。
タイトルの意味がラストにわかる。なんだよ、仲いい家族じゃねえかよ、と苦笑いでツッコミをいれた。
コメントする