劇場公開日 2021年8月13日

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「誰にでも起こり得ることをホラーテイストで描きながら、現実問題という余韻を残す!!」レリック 遺物 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5誰にでも起こり得ることをホラーテイストで描きながら、現実問題という余韻を残す!!

2021年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

未公開スルーな予感がしていた『レリック -遺物-』が小規模ながら劇場公開されたことは、とりあえず喜ばしいことだ。

今作は日系オーストラリア人監督のナタリー・エリカ・ジェームズの長編初監督作品となるが、日本にいる祖母を久しぶりに訪ねた際に、認知症によって別人のように変わってしまっていた実体験をベースにした物語であり、ホラーコーティングしているものの、描かれていることは、誰にでも身近に起き得ることである。

3世帯を通して描かれるという点にも意味があって、別人のようになってしまった、その対象の人物が「母」であるか「祖母」であるかによって、また見え方が違ってくる様子がケイとその娘サムの目線を通して伝わってくるのだ。

ケイの場合は「母」であることから、今まで育ててもらった恩だったり、長い間会えていなかった後悔なども入り混じりつつも、自分の手に負えないという不安もある。一方、サムの場合は「祖母」であって、少し距離感のある関係ということもあり、責任が直接的ではないことからも、その目に映るのは「可哀そう」という印象が強かったりもする

超常現象ホラーのようでありながら、基礎となっているのが日常にある問題というのが、より恐ろしく感じるの同時に、切なさも強烈に伝わってくる。

アンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』は、認知症の視点から見た世界がサスペンスのように描かれていたことが斬新に感じた作品であったのに対して、割と家族の視点からの作品というのは、豊富にあるし、今までのホラーの中にも、精神疾患や認知症といったものへの日常的不安が悪魔や心霊となって表現されきた作品はあるのだが、ホラーテイストに仕上げながら、身近な問題という絶妙な距離感を保ったことは、今作の特徴であり、大きく評価できる点である。

自分の身近な人物、大切な人物が全く別の存在になっても、存在そのものは内側からも外側からも変わらないとしたら、それでもその人を愛し続けられますか…という問いを極端な角度から求めてくるような作品ともいえるだろう。

登場人物が比較的少ないことに関しても、結局は「家族」の問題でしかなく、周りは何もしてくれない。という皮肉のように感じられた。

バフィー吉川(Buffys Movie)