劇場公開日 2022年4月1日

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「正しさとは何か」英雄の証明 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5正しさとは何か

2022年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公のラヒムは、根が真面目で誰からも嫌われないような人物です。しかし、周りの意見や状況に流されやすく、やや主体性に欠ける人でもあります。そもそも服役している現状も、そんな彼を見ていると意外なことではありません。
良いことも悪いこともテンポよく進む展開は、ラヒム自身が「なぜ今こんな状況に」と戸惑うほど。「トントン拍子で進んでいる」と思っていた状況が、その数時間後には「取り返しのつかない」ことになっています。
事のつじつまが合わなくなるたびに、ついつい取り繕うための「流された言動」や「小さなウソ」を重ねてしまうのですが、それぞれの言動は観ている我々の側にも覚えがあったり、同情的に感じることであり、結果として起きる状況はその積み重ねです。そして、鍵となるところでのラヒムの決断は正しい選択であるため、けして彼を責める気にはなれません。
或いは、だからと言ってラヒム以外の人物たちについても絶対的に悪意ある人間はいません。みな、その立場になれば理解できるようなことばかりです。
そのため、結果的には観ている側の我々自身が「正しさとは何か」を考えさせられる内容であり、この点は他のファルハディー監督作品にも共通しています。
同監督の作品は『彼女が消えた浜辺(10)』以降全て観ていますが、今回も裏切らず面白い作品となっています。

TWDera