「原題は過去形」すべてうまくいきますように いちさんの映画レビュー(感想・評価)
原題は過去形
Tout s'est bien passé(Everything went fine)が原題。安楽死がテーマの映画に、『すべてがうまくいきました』という邦題は付けられなかったんだろうけど、そこに彼我の社会文化状況の大いなる違いを感じる。ゲイの成功した美術商の父親を主人公にして、オゾン監督は素晴らしい現代の民話を作ってくれた。カズオ・イシグロ脚本のLiving(「生きる」の戦後英国復興期版リメイク)同様、孤独感や残酷さなど避けて通れない人生の経験の局面をハッとする諧謔、アイロニーで捉えつつ、親密さを織りなす世界がベタベタせず大切に優しく描かれている。オゾン映画のミューズたるシャーロット・ランプリングの演技にも感嘆。さいたま芸術劇場で鑑賞したが、事後のトークは若い研究者のベタな安楽死賛否論で興醒め。
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