「その時、このジレンマに立ち向かえるか?」すべてうまくいきますように MARさんの映画レビュー(感想・評価)
その時、このジレンマに立ち向かえるか?
脳卒中で倒れた父が、体の自由がきかなくなり安楽死を望むように。。終わりにしたい父親と、まだ生きていて欲しい娘達との葛藤を描いたドラマ作品。
倒れてしまったものの、その後の経過は比較的良好で生きていくことはできそうな様子の父アンドレ。それでも、その頭の中は早く安楽死をしたい気持ちが占めており、安楽死が合法のスイスに行く日程を決めたいとばかり言っているが・・・。
安楽死・尊厳死を題材にした作品は最近多いような気がしますが、何度観ても難しい問題ですね。
ワタクシも、本人が望んでいるなら・・・とか思ってしまうし、残された物のエゴで生かし続けるのは・・・なんて思っていますが、、、
そうか、気持ちの問題だけじゃなくて色々な壁があるのね。確かに、悪用だって出来てしまうだろうし、命の問題だからそう単純にハイどうぞ、にはなりませんよね。意外にもサスペンス風(は言い過ぎ?)になった終盤を見て、そんな気持ちになった。
それでも、隠しきれない生への希望や、本人のみならず、あらゆる立場にある周りの人々の立ち回りなんかもリアリティがあって、とても見応えがあった。
この題材でいてちょいちょい笑いを入れてくるセンスもグッド。寧ろ後半になるにつれコミカルさが増えていったような・・・(笑)
ちょっと気になったのが、例えば両腕が完全にマヒしている人の場合は、この選択肢はなくなるということなのだろうか?
お気に入りキャラは、序盤の病院で同室になった、同じく脳卒中のおじさん。出番こそあそこまでだったけど、恐らく見舞いの家族などがおらず、あの感じでいて秘めたる寂しさやアンドレへの羨望なんかも垣間見えて、作中一番胸が締め付けられた場面だったなぁ。
最愛の父がそれを望んだ時、自分の気持ちと相反しても人は動き出せるのだろうか?
改めて、人の気持ちと死とについて考えさせられる作品だった。